更新日:2023年10月18日
高齢になると体力や気力が衰え、自宅の片付けやごみ出しができなくなる方が多くいらっしゃいます。
そのような方の代わりに家の片付け・清掃をおこなうのが『福祉住環境整理』。
介護整理とも言われていますが、安心して在宅で過ごせるよう、住環境を整えることができるとして最近注目されています。
高齢化社会となった日本では、今後も需要が増えていくとみられるものですが、その内容ややり方、依頼する業者などについて知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は『福祉住環境整理』について詳しく解説していきます。
目次
福祉住環境整理の意味や目的
まずは『福祉住環境整理』について、理解していきましょう。
福祉住環境整理の意味
福祉住環境整理(介護整理)とは、特に高齢者や身体の不自由な方が住まわれる部屋を、より良い環境になるよう片付けることを言います。
住まいは、人が生活していくうえで基盤となり、重要な場所。
食事や入浴、睡眠などのほかにも、楽しく過ごしたり、心地よく過ごしたりするためにも大切な場所だと言えます。
福祉住環境整理では、介護の視点から見ても快適な住まいにするために、自分では難しくなった「家の片付け」を家族でおこなうか、民間の業者へ依頼します。
また、目的として、介護や自立した生活のためにもおこなうとされています。
福祉住環境整理の必要性
- 安心・安全のため
- 介護をしやすくするため
高齢になると病気や体力の衰えなどによって、自分の身の回りのことや家の管理ができなくなる方が増えます。
掃除や片付け、ごみ出しなどが出来なくなると部屋は汚れていき、不衛生になることで感染症や食中毒を起こす場合や、放置し続けるとごみ屋敷となってしまうことも。
また、物が多い状態で生活をすると転倒する可能性が高くなり、高齢者であれば思わぬケガをすることや、骨折してしまうこともあるかもしれません。
余計なものやごみを減らし、部屋を整えることで安心して生活できるようになります。
さらに在宅で介護をおこなう場合にも、介護ベッドや治療機器を置くスペースを確保することや移動がスムーズになり、介護する側の負担も減らすことができるでしょう。
福祉住環境整理と間違えやすいもの
福祉住環境整理は他の整理と何が違うのでしょうか。
また、似たような言葉もありますが、それぞれ目的や内容が異なるため知っておきましょう。
- 福祉住環境整備…バリアフリーやリフォームをすることで介護生活や自立した生活環境を改良していくこと
- 生前整理…自分が亡くなった後に残された家族が相続や遺品整理で苦労しないために、自身の身の回りの「持ちもの」や「財産」などを整理・処分する活動のこと
- 遺品整理…亡くなった方がのこした様々な遺品を整理し、故人の暮らしていた家を片付けること
これらは言い方が異なるものの、その目的や作業内容には共通した部分も多いものです。
福祉住環境整理が必要なときは
福祉住環境整理は「必要だ」と判断すれば、いつでもおこなうことができるものです。
ここでは実際に、福祉住環境整理をおこなった人たちがどのようなタイミングで利用したのかをあげてみます。
福祉住環境整理を依頼するタイミング
- 自力で身の回りの片付けや掃除ができず、住環境が悪化したとき
- 自宅介護を始めるとき・同居を始めるとき
- 施設への入居をするとき
- 長期入院や短期の入院を繰り返しているとき
- 家のクリーニングや大掃除のとき
ケース1.自力で身の回りの片付けや掃除ができず、住環境が悪化したとき
自力での片付けや掃除が困難なケースは、高齢による体力の衰えだけが原因ではありません。
身体は元気であっても認知症を患い、必要・不要なものの正しい判断が出来なくなるケースや、うつ病やセルフネグレクトによって自分の世話(食事や掃除、入浴など)を放棄してしまうケースもあります。
このような症状が悪化すると、家の中がごみだらけになるなど、ごみ屋敷化して害虫が湧いたり、悪臭がしたりすることも。
また、ごみ屋敷化した部屋で暮らすことで肺や皮膚の病気を引き起こすことも考えられます。
ケース2.自宅介護を始めるとき・同居を始めるとき
実家で一人暮らしをしていた親の介護を始めるときや、親を引き取って自宅で同居を始める、というときにも福祉住環境整理をおこないます。
介護をするには介護ベッドや車いす、医療器具などが必要になることが多く、それまで使用していた家財を整理してスペースを確保をしなければなりません。
スペースの確保は転倒や事故などのリスクを減らすことにも繋がり、生活への不安も軽減してくれるでしょう。
また、介護をしやすい環境を作っておくことで、介護者の負担も減らすことができます。
ケース3.施設への入居をするとき
施設への入居が決まった際も、福祉住環境整理のタイミングと言えます。
一般的に、施設へはたくさんの荷物は持ち込むことができません。
そのため、施設へ運ぶものとそうでないものの選別を兼ねて、家の中の整理をおこないます。
これは生前整理とも似ていますが、生前整理はあくまで「亡くなったあとの準備」という目的であることが多く、「施設への入居のための家の整理」は福祉住環境整理と分類されることが多くなります。
住人がいない家は傷むことやホコリや汚れが溜まることも多くなるため、定期的にハウスクリーニングをする場合もあるでしょう。
ケース4.長期入院や短期の入院を繰り返しているとき
施設への入居と同じく、家を一定の期間離れる場合には掃除や片付けなどをおこなっておく必要があります。
病院から家に帰ったあとは家の掃除や片付けが思うようにできないことが多く、あらかじめ整理しておくことで退院後も快適に生活することができるでしょう。
また、長期間家を空ける場合、部屋が散らかっていると火災のリスクが高くなるおそれも。
コンセントにホコリが溜まり、湿気が加わって放電するトラッキング現象が起きる恐れや、人の気配が感じられず、木材や新聞などの可燃物が多い家だと放火されやすいことがわかっています。。
物を減らし、片付けておくことで自然発火や放火のリスクを減らすことができるでしょう。
ケース5.家のクリーニングや大掃除のとき
普段は掃除や片付けも自分でできるけど、大きな家具や家電を処分したいときや、家全体の大掃除をしたいとき、庭や物置の片付けをしたいときなど、自分ひとりでは難しい片付けの際に福祉住環境整理を業者へ依頼するというケースもあります。
内容としては一般的な整理や清掃、ハウスクリーニングと大して変わらないこともありますが、定期的に福祉住環境整理をおこなうことで家を清潔に保つことができます。
福祉住環境整理という名称で依頼をしていなくても、家の中を生活しやすいよう整理することを目的として業者を利用することで、結果的に福祉住環境整理としての役割を果たしていることになるでしょう。
福祉住環境整理は誰がおこなうのか
福祉住環境整理をおこなうときは、家の住人である人が高齢や病気によって自分でおこなえないことがほとんどです。
そのため、以下の人が中心となっておこないます。
- 家族
- 介護員(ヘルパー)
家族であれば住人本人の必要・不要なものの選別や要望を聞き、それに合わせて部屋を片付けたり生活しやすくなるよう改善します。
また、介護員は身体機能やADL能力、社会参加状況、家族の介護力などを把握し、同じく生活しやすくなるように住環境のプランを提案してくれるでしょう。
※「ADL」とは、日常生活動作(Activities of Daily Living)の略で、排泄・食事・入浴など日常生活で必要な基本動作を表し、介護される方の介護レベルを図る指標になっています。
福祉住環境整理をおこなうときのコツ
福祉住環境整理というと難しく考える方も多いと思いますが、その目的は以下のようなことです。
- 安心・安全に生活できるようにする
- 介護人が介護をおこないやすいようにする
それには部屋をどのようにしたらよいのでしょうか。
詳しくご紹介します。
1.床に物を置かない
高齢者や身体に不自由のある方が生活するには、床に物や段差がなく、障害物がない状態が理想です。
ちょっとした物でもつまづいてしまったり、転倒してしまったりすることで大きなケガに繋がることもあります。
床置きしている物や、不要な物は片付けるか処分するようにしましょう。
2.高い場所に物を置かない
食器棚や洋服ダンスの上に物を置いている、押し入れの上部にたくさん物をしまっているという方も多いのではないでしょうか。
そのような場所の物を取る場合、背伸びをして無理をするか、踏み台を使って取っているという人もいるはず。
しかし床に物があるのと同じように転倒の危険があるほか、上に置いてある物が落ちてくる可能性もあります。
家具も背の高いものではなく、低いもの、手の届きやすいものにするようにしましょう。
3.通路を広く、掃除をしやすい部屋にする
介護が必要となる場合、車いすや介護ベッドが必要になったり、医療器具を家に持ち込んだりすることもあります。
そのため廊下や部屋の中で移動しやすいよう、通路となる場所に家具や物を置かないようにするのがおすすめです。
また、物が多いとそれだけ収納するスペースが必要になり、管理や掃除をするのも大変になります。
持ち物は自分が管理できるだけの量に減らすことで片付けが楽になるほか、掃除がしやすいことでホコリが溜まることもなくなり、衛生面でも安心できるでしょう。
福祉住環境コーディネーターへ相談する
「福祉住環境コーディネーター」とは、高齢者や障害者が安全かつ、快適に暮らせる住みやすい環境を提案する資格を持つ人のことです。
具体的にはケアマネージャーや建築士など介護や住まいの専門家と連携し、車いすや介護ベッドの使用に関するアドバイスや家の改修提案などをおこなうなど、住まいのコーディネートをしてもらいます。
まだ生まれて日が浅い資格ですが、高齢者や障がい者の住まいに関して相談ができるということで今後需要が伸びると言われており、ハウスメーカーや福祉施設、福祉用具メーカー、病院や保健所、公共施設など幅広い分野で必要とされるでしょう。
このような専門家へ相談することで、具体的な住まいの提案を受けることができ、住宅の改修(バリアフリー化や手すりの取り付けなど)が必要な場合にも役立ちます。
福祉住環境整理を業者へ依頼する場合
住人本人に片付けや掃除をする能力がなくなった・病気や高齢などで介護が必要になったという場合、家の中が汚部屋やごみ屋敷状態であることもあります。
汚れや物の多さなどのレベルにもよりますが、自分たちで部屋の片付けをおこなうのが困難な場合は業者へ依頼するようにしましょう。
業者へ依頼をする場合、清掃業者や生前整理・遺品整理業者へ依頼するのがおすすめ。
具体的な業者選びのコツは以下の通りです。
- 営業に必要な許可を持っている
- 生前整理・遺品整理の実績がある
- 無料見積もりや相談がある
- 不要なものの処分と同時に買取を依頼できる
1.営業に必要な許可を持っている
福祉住環境整理では不要な物を処分し、片付けを進めていくことが多くなります。
特に家の中に物や捨てられなかったごみを溜め込んでいた場合、処分するものが大量にあるため、それらを一度に処分することができる業者は大変便利です。
しかし業者が一般家庭から出る不用品を処分するには、「一般廃棄物収集運搬許可」が必要で、これを保有していない無許可業者へ依頼をしてしまうと不法投棄などのトラブルに巻き込まれるおそれも。
そのため、ホームページなどで資格を保有しているかどうかを確認してから依頼をするのがおすすめです。
2.生前整理・遺品整理の実績がある
福祉住環境整理は遺品整理や生前整理と作業内容が似たものになります。
遺品整理では故人の荷物を、生前整理では今暮らしている人の物の整理をおこないますが、どちらも今ある物の量を減らしたり、必要・不要なものの分類をしたりすることで家の中をスッキリさせます。
また、生前整理では住人の生活をしやすくし、万が一の時に家族の負担を減らすという目的もありますが、そのような意味でも福祉住環境整理と似た点が多いと言えるでしょう。
生前整理や遺品整理の実績のある業者であれば、依頼者の要望を聞きつつ思いやりの気持ちを持って作業に取り組んでくれます。
3.無料見積もりや相談がある
どの業者を選ぶかの決めてになるのはサービス内容や料金、スタッフの対応ではないでしょうか。
その比較をするには見積もりを取ることが大切です。
優良な業者であれば無料見積もりのあることがほとんどですので、依頼してみましょう。
最近ではLINEやメールから簡単に見積もりを取ることもできます。
事前に「福祉住環境整理をおこないたい」ということを相談しておけば、どのように作業を進めるかなども知ることができるかもしれません。
業者によっては家具の配置移動や、ハウスクリーニングなどのサービスをおこなっているところもあるため、事前に相談することでより希望に沿った福祉住環境整理をしてもらえるでしょう。
4.不要なものの処分と同時に買取を依頼できる
清掃業者や生前整理・遺品整理業者では不用品の処分をおこなってくれます。
通常、自分で片付けをおこなう場合、不用品を種類ごとに分別し、それぞれのごみ出しルールに従って処分しなければなりません。
業者へ依頼をすれば、ごみの分別や部屋からの運び出しをする必要がなくなることも大きなメリットと言えます。
しかし、当然ですが自分でごみや物を処分するよりも費用が高くなってしまいます。
そこで、買い取りサービスのある業者を選ぶことがおすすめです。
不用品の中で買い取れるものがあればかかる費用から差し引いてもらえるため、実際に支払う費用が安くなります。
自分たちで売れそうなものをリサイクルショップへ持ち込む…という手間も省くことができますし、リユース・リサイクルできるものを買い取ってもらうことでごみが減るので、環境のためにも良いと言えるでしょう。
ほかにも知っておきたい業者選びのポイント
業者へ依頼する際に知っておきたいことを二つ解説していきます。
業者への見積もり依頼・支払いは家族同伴がおすすめ
業者へ依頼するとなれば、やはり「安心して依頼ができる」業者を選びたいもの。
しかし高齢になり判断能力が衰えてくると、見積もりや支払いなどのやり取りでおかしいと思うことがあっても気付けない恐れもあります。
子どもや親戚などの家族が同伴し、一緒に業者へ接することで悪徳な業者を選んでしまうことや、間違ったプランを依頼してしまうことなどのリスクを減らすことができるでしょう。
遺品整理士がいる業者がおすすめ
福祉住環境整理は、「誰がおこなうか」という決まりはなく、どのように作業を進めても構いません。
しかし、作業内容が「生前整理・遺品整理」と似ている点から、できれば「遺品整理士」が在籍している業者へ依頼すると安心でしょう。
遺品整理士は故人の貴重品や形見、処分するものなどの仕分けをおこないますが、物を大切に扱い、故人や残された遺族の気持ちを大切に作業を進めます。
福祉住環境整理でも住人の必要・不要なものの仕分けを手伝ってくれるほか、プロの知識を持った人が丁寧に作業をしてくれるということで一般的な清掃業者と異なったサービスが期待できます。
福祉住環境整理の第一歩はモノを減らすことから
高齢者や病気を抱えている方は、自分の家の掃除や片付けをきちんとおこなうのが難しくなります。
誰かの手助けがないと部屋だけでなく、キッチンや浴室などの水回りや、庭や駐車場の管理が困難なこともあるでしょう。
福祉住環境整理と言うと難しく考えてしまうかもしれませんが、住人が安心・安全に暮らせるよう、部屋の片付けをおこない、それを維持できるようにするのも目的の一つです。
そのためには部屋の物を減らし、掃除や管理がしやすいようにすることが第一歩と言えるでしょう。
そこに介護などが加われば、「介護がしやすいようにする」という観点からも家を片付けなければなりません。
福祉住環境整理は高齢者がおこなうことが多いことを考えると、遺品整理や生前整理の実績が豊富な業者へ依頼することで、住人の気持ちに寄り添った作業をしてもらえるでしょう。
当社「ラクタス」は遺品整理士などの専門知識のあるスタッフが多く在籍し、遺品整理士認定協会から平成27度の「優良事業所認定書」を受けるなど、実績のある会社です。
ごみ屋敷専門の清掃業者であることから、不用品が多い場合や、汚れが酷い場合など、どのような部屋であっても対応が可能。
もちろん不用品の買取や、ハウスクリーニング、生前整理・遺品整理・福祉整理など、さまざまなサービスをご用意しております。
依頼者や住人の気持ちに寄り添った、安心できるサービスを提供いたしますので、お気軽にご相談ください。
2023-08-04