更新日:2023年2月17日
かつて仏壇は、日本のどこの家庭でも置かれているのが当たり前で、頂き物のお菓子や故人の好きな食べ物をよくお供えしたものです。
しかし、近年では核家族化が進み、家が狭いことや後継者がいないことから仏壇を持たない家庭が増えています。
また、同じような理由から仏壇を手放す人や、小さな仏壇に買い替えるという人も多いのではないでしょうか。
仏壇は先祖の魂を祀っていたものであり、手放すと言っても簡単に捨てるわけにはいきません。
仏壇の処分は少々複雑なため、きちんと手順を理解して行うのがおすすめです。
ここでは仏壇の正しく手放す方法や、知っておきたい注意点について詳しく解説していきますので、手放す際の参考にしてみてください。
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目次
仏壇を処分すると決めたら確認したい「開眼供養」
「開眼供養(かいげんくよう)」という言葉をご存じでしょうか。
開眼供養(開眼法要とも言います)とは、新しくお墓を建てたときや仏壇を購入したときなどに行う、仏様の魂を入れ込む大切な供養のことを言い、魂を入れる法要のため「魂入れ」と呼ばれることもあります。
新たに仏壇を購入したときには仏壇を設置した場所、もしくはお寺で開眼供養が行われ、お坊さん(僧侶)を招いて読経していただきます。
これにより、安置している仏壇のご本尊(仏像)や位牌の目を開くとされ、霊験(れいげん)が宿ると言われています。
※霊験とは…神仏が示す不思議な利益や験のこと。
この開眼供養を行っていた場合、仏壇を処分するときには「閉眼供養(へいげんくよう)」という作業が必要になります。
閉眼供養は開眼供養とは反対に、先祖の魂を抜く儀式のことです。
寺院などによっては「御霊抜き(しょうぬき)」「魂抜き(たましいぬき)」「性根抜き(しょうこんぬき)」「撥遣供養(はっけんくよう)」など、呼び方が異なりますがどれも意味は同じになります。
開眼供養・閉眼供養ともに仏壇以外にお墓を購入、または手放す際に大切な儀式ですので知っておきましょう。
閉眼供養の疑問
ここでは閉眼供養について、もう少し詳しく解説していきます。
閉眼供養は必ずやらないといけない?
閉眼供養は必ず必要なのか、迷われる方もいるかもしれませんね。
もし、自分自身が仏教を信仰していなくても、実家や親戚の仏壇を処分する機会があったときには閉眼供養、つまり魂抜きという儀式は行うのがおすすめです。
先祖代々の仏壇には魂が宿っているという考えがあり、それを粗末に扱うのは気が引けることでしょう。
今までの感謝の気持ちを表す意味も含めて閉眼供養は大切な儀式だと言えます。
宗派によっては閉眼供養は行わない
ほとんどの仏教の宗派では、仏壇やお墓に対し「魂を入れる」という考えがあります。
しかし、浄土真宗には仏壇などに魂が宿るという概念がありません。
そのため、浄土真宗では閉眼供養や魂抜きといった儀式は行いませんが、その代わりに「 遷仏法要 」(せんぶつほうよう)もしくは遷座法要(せんざほうよう)と呼ばれる法要を行います。
浄土真宗では、開眼法要や魂入れの代わりに、「入仏法要」(にゅうぶつほうよう)という法要がありますので、宗派によって違いがあることも知っておきましょう。
閉眼供養の対象になるものとは
先ほど、「魂を入れる」ことの対象としてお墓や仏壇と述べましたが、同じように「魂が宿っている」と考えられるものは、閉眼供養の対象となります。
例えば位牌や遺影、仏像や人形、掛け軸など、不要になったときだけでなく修理や移動させる際にも行う場合があります。
仏壇については処分のときはほとんど行いますが、移動や修理の際の閉眼供養については宗派によって考えが異なりますので、菩提寺(先祖代々の墓をおき、葬式や法事を行う寺)に確認することをおすすめします。
閉眼供養はどこへ依頼するの?
閉眼供養を行うときは、菩提寺へ依頼をするのが一般的です。
お寺や宗派によって用意するものが異なるため、閉眼供養をすると決まったら早めに連絡しておきましょう。
ただし、必ずしもお寺に依頼しないといけないのではなく、仏具店でも閉眼供養を引き受けてくれるところがあります。
どちらも仏壇を持ち込むか、取りに来てもらうかはお寺や仏具店によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
閉眼供養の費用はいくら?
閉眼供養にかかる費用は僧侶へのお布施、お車代、御膳料などです。
また、供花やお供え物を用意したり、親族との食事会があればその費用も必要になります。
お布施は2万円~5万円程度、平均は3万円です。
自宅へ来てもらう場合にはお車代として5千円~1万円程度渡すのがよいでしょう。
仏具店では閉眼供養と処分の費用がセットになっていることが多く、その費用は2万円~8万円ほど。
しかしこちらも運送の距離や仏壇の大きさなどによって金額が異なるため、仏具店で見積もってもらうことをおすすめします。
閉眼供養の流れ
ここでは閉眼供養を行うときの流れを詳しく説明していきます。
お寺の都合や急なトラブルに備えて、実際に行う日よりも2週間くらい余裕を持って準備をすることをおすすめします。
【準備するもの】…2週間くらい前から
- お寺への連絡(僧侶の手配)
- 参列者への連絡
- 仏壇の掃除
- お布施の準備
- 会食の予定があればその手配
【閉眼供養に必要なもの】…前日までに
- 供花
- ローソク
- 線香
- お供え物
- お供え物の下に敷く半紙
【閉眼供養当日の服装】
- 平服(カジュアル過ぎず、男性ならダークスーツ、女性は黒、紺、グレーなどでシンプルな服がよい)
【閉眼供養当日の流れ】
- 僧侶が到着し、挨拶を行う
- 開式
- 読経
- 僧侶にお布施や車代を渡す
- 会食
閉眼供養後の仏壇の処分方法は主に5つ
閉眼供養が済んだら仏壇の処分を行います。
仏壇の処分方法は一般的に次の5つになります。
- 菩提寺など、お寺へ依頼する
- 仏具店に依頼する
- 粗大ごみとして自治体で処分する
- 不用品回収業者へ依頼する
- 遺品整理業者へ依頼する
菩提寺など、お寺へ依頼する
仏壇の処分で最も一般的なのが、菩提寺などのお寺へ処分を依頼する方法です。
閉眼供養の流れでそのまま引き取ってもらえるところもあります。
お寺での処分方法は「お焚き上げ」と呼ばれ、神仏にかかわるものや、思いがこもったものなどをお寺で焼却して処分してもらいます。
お焚き上げの費用は5千円~4万円と幅広く、仏壇の大きさによって異なるため大きい仏壇の場合はお寺に確認しておくとよいでしょう。
また、最近は環境問題の観点からお寺でお焚き上げを行っていない場合もあります。
閉眼供養と一緒に処分までを行ってもらえるのかどうか、依頼する際に確認しておくと安心です。
仏具店に依頼する
仏具店でも閉眼供養と同時に処分を引き受けてもらえます。
購入した仏具店がわかっている場合や、新たに仏壇を買い直す場合は仏具店へ問い合わせてみましょう。
費用は2万円~8万円とこちらも仏壇の大きさよって異なるため、仏具店で確認するのがおすすめです。
また、位牌や仏像、掛け軸なども別料金で処分してもらうことができます。
仏具店での処分は、提携を結んでいるお寺で他の仏壇と合同でお焚き上げにされるか、工場での解体処分になります。
自宅まで引き取りに来てもらえることもありますが、出張料金や回収料金がかかることがほとんどですので、見積もりの際に確認しましょう。
粗大ごみとして自治体で処分する
閉眼供養を終えている仏壇は粗大ごみとして自治体で処分しても構いません。
しかし、仏壇は先祖をお祀りしていたものなので、仏教の考えとしてはあまりおすすめできません。
また、「近所の目が気になる」「何となく気が引ける」という気持ちがある場合は別の方法を選んだほうがよいでしょう。
自治体によって費用は異なりますが、例えば名古屋市の場合、大きさに関わらず1基1,000円となっています。(名古屋市粗大ごみインターネット受付より)
ただし注意書きとして「神仏に関わるものなので、一部(扉や天板等)外して排出」となっています。
細かなルールや費用は各自治体のホームページで確認するか、役所へ問い合わせるようにしてください。
不用品回収業者へ依頼する
仏壇以外にも故人のものや不用品など、処分したいものがたくさんあるという場合は不用品回収業者への依頼がおすすめです。
業者によっては魂抜きや供養などを行っているところもありますので、そういった業者へ依頼をすれば一度に済みますし、扱いにも慣れているので安心ですよね。
また、電話1本で自宅まで回収に来てもらえる手軽さも魅力です。
自治体で粗大ごみとして処分する場合は、事前に申し込みを行う必要があることや、シールの購入や自分での搬出など手間がかかることがほとんど。
搬出日も月に1回程度と少ないため、すぐに処分するのが難しいこともあります。
その点、不用品回収業者では電話したその日のうちに引き取りに来てもらえることも多いため、早く片付けたいという方にも便利なサービスです。
しかし、仏壇の処分をお願いするならちゃんとした業者を選びたいもの。
必ずホームページなどで所在地や資格の保有(一般廃棄物収集運搬業許可など)が確認できる会社へ依頼するようにしましょう。
また、仏壇の処分に関しては「仏壇・仏具の供養を行っているか」も確認しておくとよいですね。
当社「ラクタス」のグループ事業である「出張回収センター」でも仏壇・仏具の供養や処分を行っております。
遺品整理の専門事業部を持ち、ご希望があれば僧侶の依頼もできますので、お気軽にご相談ください。
遺品整理業者へ依頼する
仏壇を処分するタイミングとして、「実家の親が亡くなったから」「親が施設に入るので実家を手放す」などの理由も多いのではないでしょうか。
このように遺品整理や生前整理と一緒に仏壇の処分を依頼するなら、遺品整理業者へ依頼する方法もあります。
家の中に残された家具や日用品、衣類など、大量に処分するものがある場合は、精神的にも肉体的にも負担がかかるもの。
遺品整理業者では、不用品の処分だけでなく、供養するものや形見分けをするものなどの仕分けや整理を行い、家のハウスクリーニングをすることも可能です。
「実家が遠方でなかなか片付けに行けない」「価値のあるものは買い取ってもらいたい」などの要望も聞いてもらえることがありますので、希望がある場合は見積もりの際に問い合わせておくとよいでしょう。
当社の遺品整理の専門事業部である「ウィルケア」でも遺品整理・生前整理とともに仏壇の処分も行っていますので、お気軽にご相談ください。
仏壇を処分するときの注意点
仏壇を処分する際は、閉眼供養を行うこと以外にも注意したい点がいくつかあります。
以下の点に気を付けて仏壇を処分しましょう。
- 仏壇の中身を確認する
- 位牌の魂抜き
- 宗教・宗派ごとのルールに従う
- 仏具の処分に供養は必要ない
仏壇の中身を確認する
仏壇には引き出しや収納スペースがついているものもあり、その中へ数珠や遺影、貴重品などをしまっている方も少なくありません。
処分の前に確認するようにしておきましょう。
位牌の魂抜き
位牌を保管する場所がないなどの理由で処分する場合は、位牌も魂抜きが必要になります。
仏壇と同じように菩提寺や仏具店での供養、もしくは魂抜きを行っている業者で仏壇を処分する際に一緒に頼むとよいでしょう。
また、仏壇を処分する場合でも、位牌だけは手元に残しておくという方もいらっしゃいます。
位牌も仏壇と同じように先祖の魂が宿っていると考えられるため、位牌を残す場合は新しい仏壇へ納めるのが望ましいです。
位牌が新しい仏壇に入らない場合は小さく作り変えることも可能ですので、仏具店へ相談するようにしましょう。
宗教・宗派ごとのルールに従う
仏壇の処分方法が宗教・宗派によって違うのははじめにご説明しましたが、大きな違いは浄土真宗での違いになります。
浄土真宗以外の仏教では大きな違いはありませんが、仏壇の処分の際には菩提寺や仏具店へ確認しておくと安心です。
お伝えしたように、浄土真宗では「魂抜き」や「閉眼供養」といった儀式はありません。
しかし代わりに「遷座法要」という法要があり、閉眼供養と同じように僧侶に読経してもらい、お布施も必要です。
仏壇はただの家具というわけではないため、宗教や宗派のルールを理解したうえで処分するようにしましょう。
仏具の処分に供養は必要ない
仏壇や位牌の処分時には魂抜きなどの供養が必要ですが、仏具には魂が宿るという考えはありませんのでそのまま普通に処分して大丈夫です。
仏具は自治体での可燃ごみや不燃ごみで処分できることがほとんどですので、素材に注意して仕分けるようにしてください。
普通のごみとして捨てるのは気が引ける…という場合は、仏壇の処分時に引き取ってもらえるよう依頼してみましょう。
ただし仏具の引き取りや処分が別料金という場合がほとんどですので、事前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
ここまで仏壇の閉眼供養や処分方法についてお伝えしました。
仏壇の処分は経験することもなかなかないため、いざ自分が処分する際には迷われる方も多いようです。
特に最近では日本人の信仰心が減ったとされており、閉眼供養に対しても本当に必要なのか?と疑問を持たれる方も多いかもしれませんね。
しかし、閉眼供養を行わずに仏壇を処分することは、先祖の魂も一緒に処分してしまうことになります。
仏壇の処分を行うときは、持ち主が亡くなることや引っ越しなど、生活の変化を伴う場合が多いもの。
その後の生活を気持ちよく送るためにも、正しい方法で処分することをおすすめします。
2023-02-17