更新日:2023年7月18日
日本には、ごみ出しに関する法律がいくつか定められています。
ごみ出しをしたことがある人は当然、そうでなくても何となく「ごみ出しにはルールがある」ことを知っている人がほとんどではないでしょうか。
例えば
- ごみは分別しなくてはならない
- 決められた場所へ捨てないと不法投棄になる
などです。
しかし、ごみに関して詳しい法律を知っている人となると、数が減るかもしれませんね。
ごみ出しに関する法律は案外「よく知らない」という人も多いものです。
しかし、ごみ出しは私たちの日常には欠かせないもの。
生きていくためには必要不可欠なことなのです。
そこで今回はごみに関する法律を詳しく解説していきます。
ごみの正しい出し方やごみに関する疑問など、知って得する情報をお届けします。
※この記事は2023年6月22日時点の法令等に基づいて作成しています。
目次
ごみに関する法律「廃棄物処理法」
ごみ、つまり「廃棄物」について、日本では「廃棄物処理法」という法律の中で定められています。
「廃棄物処理法」は、廃棄物の処理・保管・運搬・処分などに関するルールを定めた法律で1970年に制定されました。
その後も生活様式や産業構造の移り変わりに伴う廃棄物の実態の変更にあわせ、改正が行われています。
廃棄物処理法(廃掃法)について
廃棄物処理法の目的は、「廃棄物の排出を抑制し、適正な分別等の処理を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ること」です。(廃掃法1条)
そのため廃棄物を排出する側は、廃棄物の処理・保管・運搬・処分に関するルールを厳守しなければなりません。
廃棄物処理法における「廃棄物」とは
「廃棄物」とは簡単に言うと「ごみ」のことですが、法律上ではもう少し細かく定義が決められています。
“この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。”
(廃掃法定義2条1項より)
大まかには可燃物(紙クズ・生ごみ)、不燃物(ガラス・金属)、資源ごみ(空き缶・空き瓶)、粗大ごみ(家具など)、し尿に分けられます。
また、廃棄物は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられますが、定義は以下の通りです。
- 一般廃棄物…「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物のこと(廃掃法定義2条2項より)
- 産業廃棄物…①事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物のこと(廃掃法定義2条4項より)
②輸入された廃棄物(①の廃棄物、航行廃棄物、携帯廃棄物を除く)
上記の中で、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」は、それぞれ「特別管理一般廃棄物」「特別管理産業廃棄物」とされています。
事業者が排出するごみは「産業廃棄物」に該当し、それ以外の一般家庭から出るごみは「一般廃棄物」となります。
ごみ処理についての法律
同じく廃棄物処理法の中にある「国内の処理等の原則」では
‟国内において生じた廃棄物は、なるべく国内において適正に処理されなければならない”
とあります。(廃掃法2条の2項より)
また、同じく国民の責務として
‟国民は、廃棄物の排出を抑制し、再生品の使用等により廃棄物の再生利用を図り、廃棄物を分別して排出し、その生じた廃棄物をなるべく自ら処分すること等により、廃棄物の減量その他その適正な処理に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない”
とあります。(廃掃法2条の4項より)
つまり、国内でのごみは国内で適正に処理する義務があり、国民はそれを守らなければなりません。
当然、事業者が出すごみについても同様で、これは「事業者の責務」として廃掃法3条に記載されています。
‟事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、その製品、容器等が廃棄物となつた場合における処理の困難性についてあらかじめ自ら評価し、適正な処理が困難にならないような製品、容器等の開発を行うこと、その製品、容器等に係る廃棄物の適正な処理の方法についての情報を提供すること等により、その製品、容器等が廃棄物となつた場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない”
これらの法律を守らないと「法律違反」となってしまい、罰則が科せられることもあります。
廃棄物処理法違反とは
廃棄物処理法の中で定められているとおり、廃棄物を適正に分別・処理・リサイクルすることによって私たちの生活や環境が清潔に保たれています。
そのため、これらの規則を守らないことは生活環境や衛生などに影響が出るとし、違反者には罰則が科せられます。
私たちの身近に起きる違反内容の例は以下の通りです。
1.投棄禁止
‟何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない”(廃掃法第4章16条より)
これは、「自分の都合で勝手にごみを捨ててはいけない」ということです。
例えばごみは決められた場所・日時に沿って捨てることが決められていますが、これを守らない場合は廃棄物処理法に違反しているということになります。
2.焼却禁止
‟何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない”(廃掃法第4章16条の2より)
これは「廃棄物処理法の規定により基準を満たさない廃棄物の焼却(野焼き行為)の禁止」ということ。
例外として、公益上・慣習上「やむを得ない」焼却で影響が軽微なものは、焼却禁止から除外されています。
例えば宗教上の行事、農業、林業、漁業関連、たき火やバーベキューなどですが、その範囲は明確に決められていません。
廃棄物処理法に違反したらどうなる?
廃棄物処理法に違反した場合の罰則について、第5章25条の箇所では以下のように定められています。
‟五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する”
ごみ出しルールを破ることは単なるマナー違反のように思われる方もいるかもしれませんが、この罰則を見てわかるように重い罰則が科せられる可能性もあるのです。
もし自分が指定されたごみ出し場所でないところへごみを捨てた場合、通報され、場合によっては逮捕されることがあります。
実際に逮捕される事例もあり、注意しなくてはなりません。
廃棄物についての刑事罰は以下の通りです。(一部)
違反内容 | 刑事罰 |
・廃棄物の投棄禁止違反 ・廃棄物の焼却禁止違反 ・無許可営業(許可を受けずに、一般廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行ったとき) |
5年以下の懲役または1000万円以下の罰金または併科(廃掃法25条) |
・不法投棄又は不法焼却を目的とする収集又は運搬 ・施設改善命令違反使用停止命令違反(一般廃棄物処理施設の設置者が、施設改善命令、使用停止命令に従わなかったとき) |
3年以下の懲役または300万円以下の罰金または併科(廃掃法26条) |
不法投棄となる行為とは
一般的な家庭ごみを捨てる場合、分別や収集場所の日時・場所の指定など、さまざまなルールが自治体ごとに決められています。
これらのルールに従わず、本来捨ててはいけないものを捨てる行為が不法投棄となり、未遂であっても処罰の対象になるため注意が必要です。
また、事業者が産業廃棄物を不適切に処理すること(山や川などに廃棄すること)も不法投棄となります。
不法投棄の例は以下の通りです。
- 自治体が管理する公共の場所へ家電を置き捨てる
- 他人の家の庭にごみを投げ入れる
- 道路や空き地などに壊れた自転車を放置する
- ショッピングセンターの駐車場に家庭ごみを捨てる
- 自分が住んでいないマンションのごみ捨て場に自分の家庭ごみを捨てる
- 山や川などの自然の中に粗大ごみを捨てる
不法投棄というと山や空き地にごみを捨てる行為というイメージの人が多いでしょう。
しかし「隣のマンションのごみ捨て場に自分の家のごみを捨てた」など、ちょっとしたルール違反のような行為でも通報・逮捕されることもあるのです。
不法投棄が発覚するのはなぜ?
不法投棄が発覚する理由の多くは、土地の所有者や建物の占有者などの、管理者からの通報が一般的。
ごみを捨てるところを見られ警察に通報されることや、ごみの内容から捨てた人の手がかりを見つけることもあります。
また、集合住宅や公園などに設置している防犯カメラによる発覚も増えています。
不法投棄の時効は5年
不法投棄の公訴時効は不法投棄行為が完了してから5年です。
投棄から5年が経過すると検察官が起訴できなくなるため、罪を問われなくなります。
しかし時効があるのは刑事罰であり、5年以上経っても「措置命令」という行政処分は行われます。
措置命令は行政処分の一種
「措置命令」とは行政処分の一種です。
廃棄物処理法の場合、不法投棄を行った場所の原状回復もしくはそのために必要な費用を負担するよう命じられることになります。
産業廃棄物の取り扱いルールを違反した場合の罰則
産業廃棄物は事業者が排出するごみであり、一般廃棄物とは明確に分けられています。
よくわからないからといって、産業廃棄物を一般廃棄物として捨てるなどをすると法律違反となり、不法投棄として罪に問われることもあります。
産業廃棄物についての刑事罰は以下の通りです。(一部)
違反内容 | 刑事罰 |
・措置命令違反 ・省令の委託基準違反 ・廃棄物の無確認輸出 ・廃棄物の不法投棄、不法焼却 ・指定有害廃棄物の保管、収集、運搬、処分違反 |
5年以下の懲役または1000万円以下の罰金または併科(廃掃法25条) |
・政令の委託基準違反 ・改善命令違反 ・廃棄物の無許可輸入 ・廃棄物の不法投棄、不法焼却を目的とする収集、運搬 |
3年以下の懲役または300万円以下の罰金または併科(廃掃法26条) |
・廃棄物の無確認輸出の予備行為 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金または併科(廃掃法27条) |
・マニフェストの交付義務違反、記載義務違反、虚偽記載、保存義務違反 ・電子マニフェストの虚偽登録・報告義務違反・虚偽報告 ・マニフェストに関する措置命令違反 |
1年以下の懲役または100万円以下の罰金(廃掃法27条の2) |
リサイクルに関しての法律
リサイクルに関してもさまざまな法律があり、個別の特性ごとに定められています。
この規則には容器包装、家電、食品、建設、自動車、小型家電の6つの項目があるのでご紹介します。
1.容器包装リサイクル法
- 対象物…スチール缶、アルミ缶、ガラスびん 段ボール、紙パック、紙製容器包装 ペットボトル、プラスチック製容器包装
一般の家庭でごみとなって排出される、商品の容器や包装に使われた廃棄物(上記の対象物)をリサイクルする目的で作られ、1995年に制定されました。
消費者の役割は「分別排出」、市町村の役割が「分別収集」、事業者は「リサイクル」をすることや容器包装の薄肉化・軽量化、量り売り、レジ袋の有料化等により、容器包装廃棄物の排出抑制に努めるように定められています。
2.家電リサイクル法
- 対象物…家庭用エアコン、テレビ(ブラウン管式及び液晶・プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機
家電リサイクル法は、家庭で使われなくなった家電の再利用可能な部分をリサイクルすることで、廃棄量を削減し、資源の有効活用を推進する目的で作られ、1998年に制定されました。
対象品目は2023年現在では家電4品目とされていますが、今後増える可能性もあります。
これらは自治体では回収しておらず、家電量販店や指定引き取り所などでリサイクル料金を支払い、適切にリサイクルしなければなりません。
・家電リサイクル法について詳しく知りたい方はこちら
3.食品リサイクル法
- 対象物…食品の製造や調理過程で生じる加工残さで食用に供することができないもの、食品の流通過程や消費段階で生じる売れ残りや食べ残しなど(固形状の物だけでなく、廃食用油や飲料等の液状物も含む)
家庭から出る生ごみは対象外です。
対象となるのは事業者で、食品メーカーやスーパー、飲食店やホテル、結婚式場などが該当します。
生産・流通段階で大量の食品が廃棄されていることから、処分場の負担軽減や再利用を促すために、2000年に制定されました。
4.建設リサイクル法
- 対象物…コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材など
- 対象工事…特定建設資材(コンクリート・コンクリート及び鉄からなる建設資材・木材・アスファルト)を用いた建築物等の解体工事や新築・改修工事等で、規模の基準以上のもの
※規模の基準…床面積や請負金によるもの
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化などに関する法律)は、建設工事によって廃棄される建設廃棄物の適正な分別や再資源化を促進するために制定され、2000年5月に施行されました。
5.自動車リサイクル法
- 対象の車…すべての車
※ただし以下は除外
・被けん引車(トレーラー)
・二輪車(バイク、自転車)
・大型特殊自動車、小型特殊自動車(0ナンバー、9ナンバー)
・農業機械、林業機械、スノーモービル、自衛隊の装甲車、ホ イール式高所作業車、無人搬送車、公道を走らない自動車製造業者等の試験・研究用途車、公道を走らないレース用自動車
車を購入する際、リサイクル料金を前払いします。
これは自動車が不法投棄された場合の環境負荷などを考慮したためで、新車、中古車であっても同じです。
自動車メーカーや輸入業者は車を購入した人が支払ったリサイクル料金を使って、使用済自動車からシュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類を引き取り、適正なリサイクル・処理をしなければなりません。
6.小型家電リサイクル法
- 対象品目…家庭で利用する電気機械器具(ケーブルや充電器等の付属品を含む)のうち、家電リサイクル法が対象としている4品目を除く28類型の品目
【28分類】
・電話機、ファクシミリ装置その他の有線通信機械器具 ・携帯電話端末及びPHS端末 ・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機 ・ジタルカメラ、ビデオカメラ、ディー・ブイ・ディー・レコーダーその他の映像用機械器具 ・デジタルオーディオプレーヤー、ステレオセットその他の電気音響機械器具 ・パーソナルコンピュータ ・磁気ディスク装置、光ディスク装置その他の記憶装置 ・プリンターその他の印刷装置 ・ディスプレイその他の表示装置 ・電子書籍端末 ・電動ミシン ・電気グラインダー、電気ドリルその他の電動工具 ・電子式卓上計算機その他の事務用電気機械器具 ・ヘルスメーターその他の計量用又は測定用の電気機械器具 ・電動式吸入器その他の医療用電気機械器具 ・フィルムカメラ ・ジャー炊飯器、電子レンジその他の台所用電気機械器具 ・扇風機、電気除湿機その他の空調用電気機械器具 ・電気アイロン、電気掃除機その他の衣料用又は衛生用の電気機械器具 ・電気こたつ、電気ストーブその他の保温用電気機械器具 ・ヘアドライヤー、電気かみそりその他の理容用電気機械器具 ・電気マッサージ器 ・ランニングマシンその他の運動用電気機械器具 ・電気芝刈機その他の園芸用電気機械器具 ・蛍光灯器具その他の電気照明器具 ・電子時計及び電気時計 ・電子楽器及び電気楽器 ・ゲーム機その他の電子玩具及び電動式玩具 |
【対象外のもの】
・太陽光パネル等、特殊な取り外し工事が必要である品目 ・破損しやすく特別な収集運搬を必要とする蛍光管や電球 |
小型家電についても、昔は廃棄され埋め立て処理をされていました。
しかし埋立処分される小型家電にも、鉄やアルミニウム、レアメタルといった有用な金属が含まれています。
これらの使用済みの小型家電を再資源化するために、廃棄物の適正な処理および資源の有効な利用の確保を図ることを目的として2012年に制定されたのが「小型家電リサイクル法」です。
小型家電は市町村・認定事業者・小売業者(家電量販店など)で回収、リサイクルをしてもらうことができます。
回収方法や回収の品目は自治体によっても異なるため、お住まいの地域のルールを確認してください。
不用品回収業者を利用するときに注意したい法律
自宅から出たごみや不用品を処分するとき、不用品回収業者を利用するという人もいるでしょう。
申し込み後すぐにトラックで自宅まで回収に来てもらえるうえ、分別や運搬の手間がかからない人気のサービスです。
しかし不用品回収業者として営業するには「一般廃棄物収集運搬業許可」を得なければなりません。
これは廃棄物処理法第7条にて‟一般廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない”と定められています。
同じく産業廃棄物の収集に関しては「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要で、排出者においても許可を持つ業者へ依頼をしなければならないことになっています。
もし、無許可の業者へ収集・処分の依頼をすれば、きちんと処分されないおそれもあり、もし不法投棄など不適正処理があった場合には「依頼した側(排出事業者)にも責任がある」として措置命令が下されることも。
ほかにも料金の過請求など、トラブルに巻き込まれる恐れもあるため、資格を持つ業者へ依頼するようにしましょう。
【確認しておきたい資格】
- 一般廃棄物収集運搬業許可…家庭から出る廃棄物を収集する場合必ず必要な許可
- 産業廃棄物収集運搬業許可…事業所から出る廃棄物を収集する場合必ず必要な許可
- 古物商許可…法人・個人が古物営業法で決められている古物を売買または交換する際に必要な許可
- 家電リサイクル券取扱…廃家電の引き渡し時に「家電リサイクル券」を発行できる業者
『ラクタス』のグループ会社である『出張回収センター』は上記4点の資格を保有しています。
ごみに関する法律まとめ
ここまでごみに関するさまざまな法律をお伝えしてきました。
不法投棄をしていなくても、ごみの分別ルールを守らなかったり、指定の時間(夜間など)にごみを出さなかったり、「些細なこと」と思ったことでも法律違反になってしまうことがあります。
また、このようなちょっとした行動が近隣住民へ迷惑をかけることになり、後にトラブルとなってしまうことも考えられます。
ごみに関する法律は私たちの清潔な生活や、環境のために作られたもの。
大した事ないとは思わずに、私たち一人ひとりがごみ出しの法律やルールを知り、守っていくことが大切です。
2023-06-23