更新日:2023年12月29日
「特殊清掃」と聞いてどのようなイメージを持たれますか?
「事故現場のあとの掃除」「孤独死があったときに依頼する清掃」など、特別な時に依頼する清掃だと思う方が多いのではないでしょうか。
実は特殊清掃は、ごみ屋敷清掃や災害復旧など、自分たちでは落としきれない汚れや臭いを取り除きたい場合に有効な掃除で、誰にでも依頼する機会があるかもしれません。
しかし現実的に、事件や事故などがあった部屋の清掃で必要になることも多く、必ずしも「事故現場ばかり」ではないとは言え、特殊清掃は人の「死」と密接な関係にある仕事と言えるでしょう。
実は近年、孤独死やごみ屋敷の増加に伴って、「特殊清掃」の需要が高まっています。
高齢者の数が増え続ける日本では、65歳以上の5人に1人は一人暮らしであると言われており、今後も必要とされる場面が増えると思われます。
このような社会であるからこそ、同様にニーズが高まっているサービスの一つである「遺品整理」。
一見、全く違うサービスにも思えますが、関係している部分も多く、どちらも同時に扱う業者が増えているとのこと。
今後、私たちにとってさらに身近なサービスになるのではないでしょうか。
そこで今回は、特殊清掃について詳しく解説するとともに、遺品整理との違いや業者へ依頼する際に知っておきたいことなどをご紹介します。
目次
特殊清掃とは
まずは特殊清掃について、詳しく解説していきます。
特殊清掃の作業内容とは
特殊清掃は、通常の清掃では落とせないような汚れや悪臭を取り除き、除菌をおこないながら現状回復をする作業です。
特殊清掃で扱う物件のほとんどは強烈な腐敗臭や害虫、細菌などの多い悲惨な現場です。
ときには大量のごみや、死体から出た体液や脂、血液、消化液、髪の毛や糞便なども取り除かなければなりません。
例えば人が亡くなった部屋の場合、夏なら死後1日~2日、冬でも数日で腐敗が進みます。
腐敗した遺体は体内でガスが発生し、膨張するため皮膚を破りながらガスや体液が漏れ出します。
そうすると体液が床へ染み込み、腐敗臭が部屋中に蔓延。
腐った遺体にはハエが産卵し、ウジ虫やゴキブリが大量に湧くでしょう。
また、事故物件やごみ屋敷には必ずと言っていいほど大量のカビが多く、ときには床が真っ黒になっていることもあります。
これらを特殊な器具や洗剤など、プロの技術ですべて清掃し、除菌や消臭までおこなうのが特殊清掃です。
特殊清掃が必要なケース
改めて、特殊清掃が必要なケースとはどのような現場なのでしょうか。
以下が依頼の多い現場の例です。
- 孤独死があった部屋
- 殺人・事故・自殺などで人が亡くなった部屋
- ごみ屋敷
- 水災害などがあった部屋
これを見ても通常の部屋の清掃とは違うことが想像できます。
ごみ屋敷や災害に遭った場合など、清掃や除菌、消臭をしたい際にも利用されるケースがありますが、やはり人が亡くなった場合などは技術面でも精神面でも個人で清掃をおこなうことは難しく、特殊清掃を依頼するケースがほとんどです。
人が亡くなった部屋を清掃する場合、警察が遺体を引き取り現場検証などをおこなった後、入室許可を得て作業を開始します。
特殊清掃でおこなう作業内容の具体例
特殊清掃では次のように作業をおこないます。
- 床のごみ・害虫を取り除く
- 薬剤による除菌・消臭
- 汚染物(体液・カビなど)の処理
- 床材・壁紙などの交換やコーティングなど
- 消臭
※必要であれば家財の処分や遺品整理、リフォームなど。(業者や現場によって多少異なります)
特殊清掃では作業員が防護服やゴム手袋を着用しておこないます。
酷い現場の場合には、防護ゴーグルや防毒マスクが必要なことも。
現場の状況によって多少の違いがあるものの、特殊清掃が必要な場合は部屋の中が汚染されていることが多く、汚染物や虫の侵入を防ぐためや、感染症予防のためにも防護服が必要なのです。
特殊清掃にかかる期間
特殊清掃にかかる期間は、部屋の状態やどのような作業をおこなうかによって大きく変わります。
一般的に、孤独死などのケースで発見が1週間以内、腐敗の程度もそれほど酷くない場合には作業期間は1日~1週間ほど。
作業内容と期間は以下のとおりです。
- 特殊清掃作業…1日~3日
- 部屋の除菌・消臭…1日~
- オゾン消臭…3日~5日
- 床材や壁紙、畳の交換など…1日~状況に応じて
期間は作業をおこなう部屋の数や、広さによっても変動します。
室内のリフォームなども含めると1カ月程度の長い期間になることも。
例えば遺体の発見が死後3カ月経過した場合では、汚染状況が酷く、消臭の期間が長期になったりフローリングの下もすべて剥がして清掃したりと大規模な作業になるでしょう。
特殊清掃はどの業者へ依頼する?
特殊清掃をおこなう業者は年々増加しており、以下のような業者へ依頼することができます。
- 清掃業者
- 遺品整理業者
- ごみ屋敷清掃業者
- 不用品回収業者
特殊清掃をおこなう業者は、遺品整理や不用品の処分をおこなっている業者が多いでしょう。
自分の部屋で人が亡くなった場合、発見までの時間が長ければ長いほど腐敗が酷くなり、部屋の中のものも汚染されていきます。
特殊清掃をしなければ不用品の処分や部屋の片付け、遺品整理ができないことが多く、同時に依頼できる業者が増えています。
特殊清掃と遺品整理の関係
遺品整理とは、故人の持ち物を整理し、片付けること。
必要・不要なものを分類し、不要なものは処分したり、残したものを譲り合ったりしながら部屋の片付けを進めていきます。
遺品整理と特殊清掃にはどのような関係性があるのでしょうか。
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特殊清掃と遺品整理の違い
特殊清掃と遺品整理は次のように、目的や内容に違いがあります。
作業目的 | 作業内容 | |
特殊清掃 | ・故人の遺体が発見された部屋など、通常の清掃では対処が難しい部屋を現状回復すること | ・特別な器具や薬剤などを使用して清掃をおこなう |
遺品整理 | ・遺品を仕分けし、必要・不要に分ける ・心の整理 ・相続財産の有無を調べる |
・故人の部屋に残された持ち物の整理や片付けをおこなう ・不要なものを処分する |
特殊清掃はあくまで「清掃」なので、部屋に残された遺品の汚染物の除去や消臭はおこないますが、その後の仕分けや処分などはおこないません。
遺品整理は、故人の持ち物の仕分けや処分をおこなうだけでなく、心の整理をおこなうためにも大切な作業です。
遺品整理業者では、財産や形見分けに関しての法的な観点でのアドバイスをもらうこともできるため、より遺族に寄り添ったサービスが期待できるでしょう。
故人が自宅で亡くなった場合は特殊清掃をしてから遺品整理を
通常、病院など自宅以外の場所で人が亡くなった場合、故人の家は残された遺族や遺品整理業者によって遺品整理をおこなうのが一般的でしょう。
しかし、故人が亡くなったのが自宅で、発見が遅れたなどの事情があった場合、遺族がすぐに遺品整理をおこなうのはおすすめできません。
孤独死や事故があった部屋は遺体によって汚染されていることが多く、何もせずに入室すると感染症にかかる恐れがあります。
また、汚染は遺体のあった場所だけではなく、離れた場所でも細菌や腐敗臭が付着しているため、まずは特殊清掃が必要になるというわけです。
そのような部屋であっても遺品が全くないということはほぼないため、特殊清掃と遺品整理を同時におこなえる業者が求められるでしょう。
特殊清掃と遺品整理を依頼した場合の流れ
特殊清掃と遺品整理を同時に依頼した場合、作業の流れは以下のようになります。
作業手順 | 作業目的 | 作業内容 |
1.簡易清掃 | 防護服なしで部屋に入れる状態にすること |
・消毒 |
2.遺品整理 | 遺品の分類 | ・部屋の荷物の分類(依頼人と相談しながら) ・梱包 ・処分など |
3.特殊清掃 | 部屋で故人が亡くなる前の状態に戻す | ・腐敗箇所・汚染箇所の徹底清掃 ・消臭・除菌 ・不用品の処分 ・壁紙や床の交換など |
遺品整理と同時におこなう場合、故人の意思や遺族の意向なども相談し、作業を進めていきます。
もし現場が賃貸であった場合、現状回復の義務から徹底的に清掃をおこなうことや、リフォームが必要になる場合もあるでしょう。
しかし持ち家の場合は入室可能な状態になったら清掃は終了し、遺族で遺品整理をおこなうことも可能です。
特殊清掃と遺品整理を同時に依頼するメリットとは
特殊清掃と遺品整理は兼業している業者が多いため、一緒に依頼するのがおすすめです。
同時に依頼をするメリットは主に以下の2つ。
メリット1.手間が省ける
もし孤独死などで身内が家で亡くなった場合、特殊清掃をおこなってから遺品整理をおこなうという順になります。
それぞれを別の業者へ依頼するとなると、特殊清掃、遺品整理で少なくても2回は見積もりをしてもらう手間がかかります。
場合によっては3回、4回と数回見積もりや説明を受けるために現地に出向き、連絡を取る必要があるでしょう。
別々の業者に依頼するよりも一つの業者で終えれるほうが効率がよく、作業もスムーズに進みます。
メリット2.費用が安く抑えられる
手間や時間が省けるということは、その分費用も安く抑えることができます。
また、どちらの業者も自宅まで出向いて作業をおこなうため、別の業者にするとそれぞれに基本料や出張料などがかかってしまうでしょう。
遺品整理ではまだ使えるものを買い取ってくれる業者も多く、このような業者へ依頼をすれば全体の費用を安く抑えることもできます。
業者を探す際にはどのようなサービスがあるかも考慮してみてください。
【条件によって大きく変動する】特殊清掃の費用について
特殊清掃は頻繁に依頼することではないため、相場がわからない人がほとんどではないでしょうか。
特殊清掃に関しての費用は現場ごとに作業内容・作業時間が大きく異なることもあり、内容によっては金額にも大きな差が出ます。
あくまで目安にはなりますが、かかる費用についてまとめましたので参考にしてください。
特殊清掃の費用相場
特殊清掃の費用は作業ごとに分かれており、作業する部屋が多いほど金額も上がります。
作業内容 | 料金 |
床上清掃 | 30,000円~ |
浴室清掃 | 50,000円~ |
消臭剤・除菌剤の散布 | 10,000円~ |
消臭と除菌(オゾン処理) | 1日10,000円~ |
汚れた畳の撤去 | 1枚2,500円~ |
害虫駆除 | 10,000円~ |
作業員人件費 | 20,000円~ |
上記はサービス内容に対しての料金で、実際は基本料金や通常の清掃料金などがかかることもあります。
また業者によってはパック料金や部屋の大きさによって料金を定めていることもあるため、見積もりをおこない確実な料金を知ってから依頼したほうが安心でしょう。
特殊清掃の費用相場は20~30万円程度
特殊清掃は現場によって費用が大きく変動します。
業者によってはパック料金を用意しているところもあり、その料金体系もさまざま。
そのため、具体的な「費用相場」というものを出すのは難しいですが、多くの業者では家の間取りごとでの費用相場というものを以下のように表記しています。
間取り | 特殊清掃の費用相場 |
1LDK | 70,000円~ |
2DK | 90,000円~ |
2LDK | 120,000円~ |
3LDK | 170,000円 |
しかし、特殊清掃では清掃が必要な箇所が1部屋だけというケースもあり、家の間取りが参考にならないこともあります。
また、汚染物が多く、処分するものや作業が増えた場合は費用が上がるため、上記よりもかなり高額になることもあるでしょう。
特殊清掃と遺品整理を同時に依頼した場合の料金
特殊清掃と遺品整理を同時に一つの業者へ依頼した場合、料金は遺品整理の料金に特殊清掃の作業料金が加算されることが多いです。
目安を知るために、まずは遺品整理の費用相場を知っておきましょう。
【遺品整理の間取り別・費用相場】
間取り | 作業人数 | 作業時間 | 料金相場 |
1R・1K | 1~2名 | 1~3時間 | 30,000円~80,000円 |
1DK | 2~3名 | 2~4時間 | 50,000円~120,000円 |
1LDK | 2~4名 | 2~6時間 | 70,000円~200,000円 |
2DK | 2~5名 | 2~6時間 | 90,000円~250,000円 |
2LDK | 3~6名 | 3~8時間 | 120,000円~300,000円 |
3DK | 3~7名 | 4~10時間 | 150,000円~400,000円 |
3LDK | 4~8名 | 5~12時間 | 170,000円~500,000円 |
4LDK以上 | 4~10名 | 6~15時間 | 220,000円~600,000円 |
※料金相場は作業費・車両費・人件費・廃棄物処理費など。
これに特殊清掃を追加で依頼する場合、特殊清掃の作業内容によって追加料金が加算されます。
【実例】特殊清掃と遺品整理を同時依頼した場合
1DKの間取りの特殊清掃と遺品整理を同時に依頼した場合の、予想される費用は以下のとおりです。
現場状況 | リビングでの孤独死(死後1週間以内の発見) |
間取り | 1DK |
特殊清掃内容 | 汚物除去、除菌・消臭、害虫駆除、床上清掃など |
作業時間 | 2日間 |
作業人数 | 4名 |
特殊清掃費用 | 80,000円 |
遺品整理作業内容 | 遺品の仕分け・不用品の処分・部屋の片付け |
遺品整理費用 | 60,000円 |
作業費合計 | 140,000円(税別) |
特殊清掃を業者へ依頼するときの注意点
特殊清掃を業者へ依頼する際にはいくつか注意点があります。
トラブルを避けるためにも以下のことに注意しておきましょう。
注意1.業者へは早めに依頼する
特殊清掃が必要な現場は早めに作業をしなければならないケースが多くあります。
例えば部屋で遺体が見つかるケースでは、孤独死などにより発見が遅いことがほとんど。
発見のきっかけが悪臭による隣家からの苦情というケースの場合、早めに室内の清掃をおこなわなければならない状況も予想されます。
また、遺体があった部屋はもちろん、生ごみが多い部屋も悪臭や汚染状況は時間を追うごとに悪化するため、早めに対応しなければならないでしょう。
作業が遅れるほど作業内容が困難になり、その分費用が上がることになります。
注意2.できれば複数社で見積もりを取る
早く作業したいと焦る気持ちもあるかもしれませんが、できれば2社以上から見積もりを取るのがおすすめです。
相見積もりで相場やサービスの違いがわかれば、後にトラブルになることも避けられるでしょう。
特殊清掃は現場によって料金が大幅に異なるケースも多く、実際に見積もってもらわないとわからないことも多いものです。
電話や写真だけの見積もりではなく、現場を見てもらい、確実な見積もりをもらうようにしましょう。
その際、見積もり後の無料キャンセルが可能かどうかや、見積もり後に料金の加算がないかどうかなどもチェックしてください。
また、見積もり内容の不明な点はその場でスタッフに確認し、丁寧に対応してくれるかもチェックしておきましょう。
注意3.求めるサービスがあるかどうか
特殊清掃をおこなう業者の中には、しっかりした技術を持っていない業者も存在します。
業者によって作業の方法や消臭技術などが異なることもあるため、自分が希望する技術・サービスがあるかどうかを確認しておきましょう。
ホームページ上で実績や実例を確認するほか、使用する機材や薬剤、技術などについての説明も受けると安心です。
また、遺品整理やリフォーム、立ち合いの要不要や不用品の買取、支払い方法など、他にも利用したいサービスがあるかをチェックしておきましょう。
注意4.悪質な業者に気を付ける
特殊清掃は国が認める資格などがなく、どんな業者でも作業することが可能です。
しかし、技術や実績がない業者へ依頼をしてしまうと、臭いや汚れが取り切れないということもあり得ます。
「清掃後にまだ悪臭がする」という場合、表面上はキレイになっていても床下などに体液が染みついているということもあります。
せっかく高い費用を支払っても、部屋が原状回復していなければ再度別の業者へ依頼しなければならないことも。
良い業者を見極めるためにも、見積もりや実績の確認は重要だと言えるでしょう。
まとめ
特殊清掃が必要な場面では、依頼者の精神的な負担や不安などが多いことがほとんどです。
特に孤独死や事故によって遺族を亡くされた場合、部屋の清掃以外にもお葬式や各種手続き、遺品整理など、やらなくてはならないことが多く、さまざまな負担があるでしょう。
そのような負担を軽減するためにも、特殊清掃や遺品整理などは業者へ依頼するのが有効です。
当社「ラクタス」では特殊清掃、遺品整理をおこなっています。
はじめての依頼で不安…という方も、メールや電話にてご相談していただけますので、お気軽にご連絡ください。
2023-09-25