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投稿日:2019年3月2日
更新日:2023年2月9日

「ごみ屋敷」、つまり「ごみや物が溢れた状態で放置されている家」は一時期ニュースやワイドショーで連日取り上げられるほど社会問題となりました。
ごみ屋敷は、町の景観を損なうだけでなく、悪臭や害虫が発生する、物が道路へはみ出すなど近隣住人にとっては大きな悩みの種となっています。

こういった状況を受け、最近では自治体が行政代執行で片付けるケースも出てきました。
行政代執行』とは、行政機関による撤去命令などに応じない人たちに代わって、それらのものを行政機関が強制的に撤去する、などの措置のことを言います。
つまり、家にあるごみの撤去を行うということですが、この「行政代執行」が行われるケースとは一体どのようなものなのでしょうか。

今回はごみ屋敷における「行政代執行」の内容と、実際に執行された実例や採用している自治体をご紹介します。

 

なぜごみ屋敷になるの?
ごみ屋敷を作ってしまう精神状態や心理が知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

行政代執行とは

行政代執行とは何か、詳しく説明していきます。

行政代執行とは…所有者に代わって行政が適正管理に向けた取り組みを実行すること

具体的には、

  • 道路に越境している木の枝を切る
  • 放置されているごみを撤去する
  • 倒壊しそうな家屋を解体する

というようなことです。

これらは本来、家の所有者の責任になります。
近隣住民から相談を受けた行政が、何度も改善を要求しても住民や所有者が対応しない、といった場合に行政が強制的に敷地に立ち入り、必要な対策を取るというわけです。

そのため、いきなり行政が改善してくれるわけではなく、何度も話し合いが行われるケースや解決までに数年かかるケースもあります。
また、行政代執行は緊急性が高いと判断された場合に執行されますが、その費用は所有者に請求されます。

行政代執行費用を支払わないとどうなる?

行政代執行の費用は家の持ち主に請求されると言いましたが、支払わない場合はどうなるのでしょうか。

一旦は自治体が撤去費用を支払っていますので、その費用は必ず強制的に徴収されることになります。
もし支払いを拒否した場合には、家の所有者の財産を差し押さえられることとなり、現金や預貯金、株式、不動産、車、貴金属などのすべての財産が対象。
給与についても、生活に支障をきたさない範囲として手取りの4分の1までが差し押さえられてしまいます。

ちなみに、もし自己破産をした場合にも行政代執行にかかった費用は残りますのでご注意を。

ごみ屋敷となっていた家に住んでいる場合にも、所有者の許可なく売却されてしまうこともあり、一度行政代執行が行われれば何があっても費用を支払わなければならないことを覚えておきましょう。

行政代執行までの流れ

行政代執行はどうしても状況が改善されない場合の「最後の手段」になります。
実際に実行されるまでにはいくつかの手順を踏まなければならず、数年かかるケースもあります。

基本的な手順は以下のとおりです。

  1. 市民から通報を受ける
  2. 自治体が調査・違法状態の確認
  3. ごみ屋敷の住人に助言・指導→勧告→命令の順に注意を行う
  4. 行政代執行の実地
  5. 行政代執行にかかった費用の徴収

通常、ごみ屋敷の住人が家のごみや物の所有権を主張すれば、外部の人間が勝手に片付けることや処分することはできません。
しかし、このままでは近隣住民の生活を脅かしたり、被害が出たりすると予想される場合には行政代執行が実地されることになります。

かと言って、行政へごみ屋敷の相談をしてすぐに行政代執行が行われるわけではなく、指導や勧告、公表、命令といった手順が相当な回数で実地されます。
それでも改善されない場合に行政代執行が実行され、この時点で「ごみを撤去するから」と訴えても代執行は撤回することができません。

行政代執行の事例とかかった費用

実際に行政代執行された場合、その費用はいくらくらいかかるのでしょうか。
代執行でかかる費用は一般的な家の解体やごみの撤去費用よりも高くなると言われています。

通常、家を解体したりごみ屋敷のごみや物を処分する際には、少しでも安くしようといくつかの業者へ見積もりを依頼したり、自分たちでできることはやったりと費用を抑えるために努力するはずです。

しかし、行政代執行は行政の職員が業者を選ぶため、安い会社を探す必要がありません。
そのため請求がきたときには何百万という金額になっていることもあり、驚くこともあるでしょう。

しかし、請求がきたときには支払う義務が発生していますので、「あのとき片付けておけばよかった」と後悔しても、もう手遅れなのです。

過去の事例と費用

所在地 行政代執行の対象物 かかった費用
東京都品川区 ごみの撤去 約200万円
福島県郡山市 ごみの撤去 200万円~300万円
愛知県蒲郡市 ごみの撤去 400万円

名古屋の有名なごみ屋敷の強制執行事件

名古屋で10年以上問題になっていた有名なごみ屋敷が、ついに行政代執行となったニュースが過去に話題となりました。
その建物は、敷地面積33坪の3階建て。
その全てがごみ屋敷となっており、当の住人さえも中に入れず、家の前の歩道で寝起きをする有様でした。

近隣住民からは悪臭や火災のリスクなどで苦情が相次いでいました。
実際、小火が発生したこともあったそうです。

ですが、当の住人はそれらのモノを「資源」と主張。
周りから見ればごみでも、家主が認めなければ法的には所有権があるため、たとえ行政でも今までは勝手に撤去することができなかったのです。

こうした中、2018年4月に名古屋市市議会が通称『ごみ屋敷敷対策条例』を施工
建物の所有者も裁判を起こし、2018年1月には「明け渡しを命じる」判決が下りました。
ですが、その後も住人が応じなかったため、7月3日に警察なども立ち合い「強制執行」でごみが撤去されたのです。

行政代執行の条例がある自治体

残念ながら、すべての自治体でごみ屋敷に対して行政代執行が実地できる、というわけではありません。
ここではごみ屋敷に関する条例のある自治体をご紹介します。

北海道 長沼町 妹背牛町 ニセコ町 伊達市 様似町 士別市 東川町 上士幌町 陸別町
青森県 六戸町 五戸町
岩手県 平泉町
宮城県 登米市
秋田県 秋田市 大潟村 東成瀬村
山形県 河北町
福島県 郡山市
茨城県 筑西市 坂東市 かすみがうら市
栃木県 宇都宮市 栃木市 さくら市
埼玉県 草加市 桶川市 八潮市 三郷市 小川町 三芳町
東京都 新宿区 品川区 大田区 世田谷区 中野区 杉並区 荒川区 練馬区 足立区 武蔵村山市 日野市 八王子市
神奈川県 横浜市 横須賀市 鎌倉市
静岡県 三島市 袋井市 湖西市 静岡市
富山県 立山町
福井県 坂井市
長野県 駒ヶ根市 中川村 木祖村 小布施町 高山村 朝日村
愛知県 岡崎市 豊田市 小牧市 稲沢市 名古屋市 豊橋市 蒲郡市
岐阜県 岐南町
京都府 京都市 井手町
三重県 松阪市
大阪府 大阪市 泉大津市 茨木市 門真市 泉佐野市
奈良県 十津川村
兵庫県 神戸市 加東市 猪名川町
岡山県 総社市
山口県 宇部市
香川県 土庄町 多度津町
佐賀県 小城市 嬉野市
福岡県 岡垣町 八女市 田川市 北九州市
長崎県 長与町
熊本県 合志市 南小国町 あさぎり町
大分県 杵築市
宮崎県 高原町
鹿児島県 曽於市

ここに載っていない地域でも、近隣のごみ屋敷に困っているという方は自治体へ相談してみるのをおすすめします。
条例を制定する自治体は増えつつあるため、相談や苦情が増えれば条例ができるきっかけになるかもしれません。

行政代執行には課題も

ここまでごみ屋敷における行政代執行について説明してきましたが、行政代執行にはいくつかの課題もあります。
そこには「ごみと財産の線引きが法律で定まっていない」ことや「行政代執行の実地費用は税金で賄う」という点が関係しています。

名古屋市のごみ屋敷事例にもあったように、いくら周りがごみだと訴えても、住人本人が「ごみではない」と主張すれば強制的に撤去するのは難しくなります。
個人の持ち物であればそれが何であっても「ごみかどうか」という判断基準は法律では決められていません。
このことが、ごみ屋敷問題が解決しにくい一つの原因となっています。

また、実際に強制撤去するには住人の税金が使われます。
もちろん、後にごみ屋敷の住人へ撤去費用が請求されますが、住人本人が亡くなったり、遺族が相続放棄をしたりして全額支払われないケースもあるようです。

撤去不要が回収できないとなると、その費用の負担は自治体へのしかかります。
ごみの撤去や場合によっては家の解体、樹木の伐採などは費用が大きく、自治体も慎重にならざるを得ないのが現状です。

身近にごみ屋敷があるときは

「家の近所にごみ屋敷がある」
「家族の家がごみ屋敷になっている」

そんなときはどのように対処したらよいのでしょう。
ここでは身近にあるごみ屋敷の対処法をご紹介しますので、状況に合わせて参考にしてみてください。

家の近所にごみ屋敷がある

近隣にごみ屋敷があって困っているという場合は自治体へ相談してみましょう。
お伝えしたように、条例がない地域であっても相談は受け付けてくれます。

また、アパートやマンションのような集合住宅であれば大家さんや管理会社へ相談してみてください。
集合住宅の場合はごみ屋敷があるせいで入居者が減ったり評判が悪くなったりするかもしれず、管理側としてはそれを避けるために早急に対処してくれるでしょう。

やってはいけないのが

  • 直接注意する
  • 勝手にごみを捨てる

ということです。

ごみ屋敷の住人の中には人とコミュニケーションを取るのが難しい方や、ごみを片付けることに対して過剰に反応してしまう人もいます。
予期せぬトラブルになる恐れもあるため、いきなり直接話すのは避けましょう。

また、たとえごみであってごみ屋敷の住人の所有物は「私有財産」です。
家からはみ出していたとしても、勝手に処分すれば法律違反になり、告訴される恐れもあるので注意しましょう。

家族の家がごみ屋敷になっている

実家がごみ屋敷になっている、子どもの家が汚部屋になっている…そんな相談は年々増加傾向にあります。
離れて暮らしている家族の家が知らないうちにごみ屋敷になっていたら…どう対処するのがよいのでしょう。

対処方法は以下の通りです。

  • こまめに連絡を取る
  • 家へ行き、現状を把握する
  • 家族に精神疾患や病気がないか確認する
  • 相談・話し合いをし、解決策を探る

ごみ屋敷になる原因の一つとして、孤独やストレスなどがあります。
寂しい気持ちや過度のストレスから物を溜め込んだり、買い物依存になることも考えられます。

また、うつ病や認知症を患っていればごみを捨てることさえ難しくなります。
精神疾患を患っていないかどうか、心配や気になる点があれば専門医を受診してみましょう。

ごみ屋敷になってしまった原因はどこにあるのか、まずは家族の現状を知ることが大切です。
また、遠方に住んでいる場合であればこまめに連絡を取り、何か異変がないか、家族の様子がわかるようにしましょう。

そして家の中がどのような状態なのか、把握しておきます。
ごみや物が天井まで積み上げられていないか?害虫やネズミが発生していないか?など、ごみ屋敷の状態によっても自分たちで対処できるレベルなのかどうかが変わってきます。

住人本人に片付ける意思があるのなら、一緒に協力して片付けるか、業者に依頼して片付けるする方法もあります。

このとき、住人である家族が片付けを拒否したからといって、放置するのはおすすめできません。
なぜなら、もし近隣住人から苦情や相談が相次ぎ、行政代執行が実地された場合、親族である自分にも相続時に支払い義務が課せられる可能性があるからです。

ごみ屋敷の片付けには根気や時間が必要になることもありますが、きちんと向き合うことが重要です。

 

実家がごみ屋敷になってしまった場合はどうする?
親の説得方法や片付け方はこちら

まとめ

行政代執行の重要さは年々上がってきています。
ごみ屋敷や汚部屋の相談件数も増加傾向にあり、これによって近隣から苦情や相談が増えるのももっともで、自治体も今後より力を入れていくことでしょう。

紹介したように、行政代執行の実地が決まれば「やっぱり片付ける」と言ったところで引き返すことはできません。
必ず実地されることとなり、その費用は住人、または親族に重くのしかかってきます。

そうなってしまう前にごみ屋敷の解決をしましょう。

自力でできない場合にはごみ屋敷専門の清掃業者へ依頼して片付けるのがおすすめです。
もちろん、自力での片付けよりは費用がかかりますが、プランによっては費用を抑えることもできますし、行政代執行よりもはるかに安い費用で済みます。

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ごみ屋敷を自力で片付けできるか?
判断基準についての記事はこちら

2023-02-09

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