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投稿日:2024年3月27日
更新日:2024年3月27日

静岡市では、令和5年4月より「静岡市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」、いわゆるごみ屋敷条例を制定しました。
ごみ屋敷に関する相談や報告は年々増加傾向にあり、静岡市においても例外ではありません。
市内でも苦情や相談が多く寄せられており、市民から意見公募をしたうえで、ついに条例制定に踏み切ったのです。

では、ごみ屋敷条例が制定されたことによって、ごみ屋敷へのアプローチはどのように変わるのでしょうか。
この記事では、静岡市でのごみ屋敷問題の現状や、条例内容について詳しくご紹介します。

【市内に十数件以上】静岡市のごみ屋敷事例

静岡市内では、「大量のごみが放置されたごみ屋敷のせいで悪臭や害虫に悩まされている」という苦情が複数寄せられており、市廃棄物対策課が把握しているだけでも十数件以上のごみ屋敷があるといいます。
実際に静岡市で確認されている、ごみ屋敷の事例についてまとめてみました。

20年近く続いたごみ屋敷

静岡市駿河区の住宅街にあるごみ屋敷。
その家は道路標識を覆うほど樹木が生い茂っており、敷地内はプラスチックや段ボールなどの「ごみ」が大量に散乱しています。
ごみが隣家に密接して積み重なっているせいで、隣家の壁にはシロアリの被害が出ており、ほかにヤブ蚊やネズミの被害、倒壊の危険性もあるほどでした。
地元町内会がごみを撤去するよう説得するものの、住人男性は応じず20年ほどごみ屋敷の状態が続いたといいます。

住人男性いわく「少しずつ片付けている。勝手に捨てられるは嫌なので、誰にも手伝ってほしくない。これはごみじゃない」とのこと。
現状、日本ではごみ屋敷の片付けを強制できるような法律がなく、たとえ自分の家に被害があったとしてもなかなか解決には至りません。

結局ごみ屋敷の隣家の住人が、土地の所有者に「ごみの撤去や樹木の伐採」などを求めて裁判所に民事調停を申し立て、その結果ごみ屋敷の住人である男性は市内の別の場所へ引っ越しすることとなりました。
何度かメディアでも報道されたこのごみ屋敷ですが、条例制定前だったこともあり、隣家の住人が自力で解決した数少ないケースです。

しかし、実際に調停をおこなうとなると金銭的な負担が多いうえ、ごみ屋敷の住人が引っ越ししたとしても別の場所でまたごみ屋敷を作り出してしまう可能性が高いでしょう。
根本的な解決を目指すためにも「ごみ屋敷条例」の制定が求められています。

子どもの登下校にも影響するごみ屋敷

静岡市葵区にある2階建ての一軒家。
しかし一階の窓はごみで覆われており、家の周りにも電子レンジや金属片、プラスチック類が積まれ、道路にはみ出ています。
近隣住民によると10年以上ごみ屋敷状態が続いており、車のすれ違いがしにくいことや、風の強い日はごみが周囲に飛ぶなどの被害が出ているとのこと。
家の目の前が子ども達の通学路でもあるため、ごみが崩れてこないかなどの不安もあるといいます。

条例がなかった2022年時点では、市の担当者が「住人に対しお願いベースで片付けへの協力を求めている」という対応を取っていましたが、解決には至らず。
条例の制定によってどこまで改善されるのかが期待されています。

ごみ屋敷になってしまう原因とは

ごみ屋敷の原因は非常に複雑です。
住人の性格や環境、身体的な要因など、さまざまな原因が考えられますが、なかには原因がわからないというケースもあります。
しかし近年、ごみ屋敷は増加傾向にあり、次のようなことが考えられます。

進む高齢化社会

過去にないほど高齢化社会が進んでいる日本。
昭和25年に総人口の5%未満だと言われていた65歳以上の人口は、令和3年に28.9%となり、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上となっています。

実はごみ屋敷問題においても住人が高齢者であることが多く、その原因は身体的な理由によるものがほとんどです。
加齢に伴い身体に衰えが出れば、ごみ出しや部屋の片付けが困難になるためごみを溜め込んでしまうというケースや、認知機能の低下によってごみの分別や出し方がわからなくなるケースなど。
同居者や頼れる身内が近くにいなければ、ごみ屋敷となってしまう確率が高くなります。

また、65歳以上の7人に一人は認知症を患っており、認知症患者の半数以上は「自宅が片付いていない」と答えています。
実際に認知機能に何らかの障害があるという人の多くは、「ごみをごみだと思っていない」「勝手に片付けると怒ったり泣き出したりしてしまう」などの症状が多くみられるのだとか。

高齢者によるごみ屋敷はとても深刻で、害虫が湧く中での生活や腐った食べ物を食べているなど、健康面でのリスクが大きく、一人暮らしの高齢者であれば孤独死に直結することも多いでしょう。

若い年齢層にも多い

ごみ屋敷は高齢者によるものだけではなく、若い年齢層の間でも増加しています。
実際、20代~40代によるごみ屋敷はとても多く、その原因は高齢者によるものとは全く別であることもあるのです。
若い年齢層に多い理由として、「仕事が不規則」「強いストレスを抱えている」などがあげられます。
激務に追われて家の管理まで行き届かないという場合や、夜勤のせいでごみ出しが間に合わないなど、職種によってはごみ屋敷を作り出してしまいます。

このように仕事のせいで家がごみ屋敷になってしまう場合、住人が強いストレスを抱えていることも多いもの。
人は強くストレスを感じると、モノを集めることに安心感を覚える傾向があります。
そのためモノやごみをどんどん溜め込んでしまい、気付けば家がごみ屋敷になっているということもあるでしょう。

精神疾患によるごみ屋敷

ごみ屋敷の住人には精神疾患がみられることが多くあります。
精神疾患と言うと特別な病気だと思う方もいるかもしれませんが、「うつ病」や「セルフネグレクト」などは強いストレスを受け続けることによって発症するケースが多く、他人事とは言えません。
うつ病は不安障害を合併しやすいと言われており、不安障害には「パニック障害」「恐怖症」「全般性不安障害」「PTSD」「強迫性障害」などがあります。
特に強迫性障害は日常生活への支障が大きく、ごみ屋敷化しやすいでしょう。

また、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」や「アスペルガー症候群」などの発達障害は、ごみかそうでないものの判断ができないため、ごみ屋敷になりやすいと言われています。
ほかに、不要な物を溜め込んでしまう「溜め込み症」や「買い物依存症」が関係しているケースも。

これら精神疾患の原因は病気によって異なりますが、ストレスや孤独感から発症することが多いと言われています。
そもそもごみ屋敷になってしまうまで掃除や片付けをおこなっていないということは、長い期間追い込まれた心理状態にあることも多く、長期間ストレスを抱えることでいつのまにか精神疾患を患っているということもあるでしょう。

精神疾患はなかなか自分では気付けないということもあり、周囲の人がおかしいと感じたら専門医の受診をすすめるようにしてください。

・こちらの記事もおすすめです。

ごみ屋敷は病気のせい?ADHD・ためこみ症など全部で9つの原因と解決法を解説

ごみ屋敷条例とは?その目的や背景

ごみ屋敷事例のところでもお伝えしたとおり、現在の日本にはごみ屋敷を規制する法律がありません。
もし近隣にごみ屋敷があり、悪臭や害虫などの被害を受けていたとしても解決する術がないというのが現状です。
例え自治体へ相談したとしてもごみ屋敷に対しての対応が曖昧で、たらい回しになっていることもあるといいます。

ごみ屋敷による被害は近隣住民とのトラブルだけではなく、放火や空き巣など犯罪のターゲットにもなりやすいため不安を抱える人は多いでしょう。
こうしたリスクを踏まえ、ごみ屋敷に対する「条例」を制定する自治体が増えています。

東京・足立区では800件以上解決

ごみ屋敷に関する条例の先駆けとなる東京都足立区の「足立区生活環境の保全に関する条例」は2013年に施行し、これまでに800件以上の相談や苦情を解決してきました。
足立区の条例では、ごみ屋敷の原因を作ってしまう人への支援を盛り込みつつ、廃棄物の放置などで周辺の生活環境に著しい障害を及ぼした場合、土地所有者らに対して命令や公表、代執行など厳しい措置を可能にしています。

条例があることによって、ごみ屋敷問題を解決するまでの近道ができることから、各自治体でも同じような条例の制定が続いていると言えるでしょう。
その後条例を制定する自治体は101市区町村に増えており、今後も増える可能性が高いと思われます。

静岡県内では袋井市、静岡市に続き浜松市でも制定

静岡県内で初めてごみ屋敷に関する条例が制定されたのは、2017年4月に施行された袋井市の「袋井市建築物等における物品の堆積による不良な状態の適正化に関する条例」。
条例では市民が使用する建物を「不良な状態にしてはならない」、つまりごみ屋敷化してはならないことや、市が負う責務について定められています。
また、条例の内容に違反した場合の罰則についても厳しく決められており、段階を踏んで厳しくなるなど効果的な内容になっていると言えるでしょう。

県内では令和5年4月には静岡市、同年7月には浜松市でも条例が制定されており、条例のある自治体ではごみ屋敷の解決が期待できます。

静岡市のごみ屋敷条例の内容とは

ここからは静岡市で制定された「静岡市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」の内容について、詳しく解説していきます。

条例の目的

静岡市では次のことを目的とし、条例が制定されました。

不良な建物や建築物等の周辺における生活環境が著しく損なわれる、又は損なわれるおそれがある状態を解消するため

条例で言う不良な建物とは以下のようなものを言います。

  • 物やごみの堆積(たいせき)や放置によって悪臭や害虫が発生している状態
  • 動物の多頭飼育や不適切な給餌による悪臭や糞尿による被害の発生
  • 建築物の不良な管理によって屋根の崩落の可能性がある状態
  • 建築物における立木若しくは雑草の繁茂(はんも)等がある状態

これらの不良な状態による相談や苦情は条例制定前も市に多く寄せられており、職員が福祉的な視点で働きかけ、改善できるように支援をおこなってきました。
しかし、住人本人が支援を断った場合は市が強制できないということもあり、状況の悪化が生じていたとのこと。

そこで市は、原因者(住民)への支援や不良な環境への解消をスムーズにおこなえるよう、条例を制定することにしました。
この条例は、各関係法令を統合的に活用して原因者(住民)への支援をおこないつつ、強制力のある措置や罰則を設けているため、抑止力としても期待できるでしょう。

条例案のパブリックコメント(市民意見公募)では

静岡市は条例を制定する前に、ごみ屋敷条例に関するパブリックコメントを募集しました。
ごみ屋敷に対する市民の意見数は128件で、その大多数は「不良な生活環境を作り出す原因者(住人)が抱える、根本的な問題を支援・解消してほしい」というもの。
また、「支援で解消できない場合は、措置を実施してほしい」という意見も多くみられました。

パブリックコメントからもわかるように、ごみ屋敷問題を解決するには住人が抱える問題を解消しなければなりません。
ごみを強制的に撤去するだけでは、いずれ再発してしまう可能性が高く、本当の解決にはならないのです。

静岡市はこれを受け、市の条例については以下をポイントに「人への支援に重点を置いた」内容となっています。

  • 人への支援が基本
  • 著しく周辺の生活環境に影響を及ぼす場合、強制力のある措置を実施
  • 罰則は5万円以下の過料

不良な生活環境を解消するためには

市では不良な生活環境を解消するために、以下のことを設けています。

  • 原則として、不良な生活環境の解消は原因者(住人)がおこなうこととする
  • 不良な生活環境になるまでの背景には原因者(住人)の身体的、精神的な状況や孤立などの生活上の課題があるとし、原因者への支援をおこなうこととする
  • 不良な生活環境の予防や、解消するための支援は市、地域住民、関係機関などが協力しておこなうこととする
  • 不良な生活環境を解消するための支援をおこなっても改善されない場合、解消に必要な措置を講ずる

つまり、基本的にはごみ屋敷やその他の不良な状態の解消をおこなうのは原因者(住人)としていますが、原因者が加齢や障害、疾病などによる問題を抱えている場合や、孤立によって生活に問題がある場合には市が関係機関と協力して支援をおこなうということです。
また、市民は不良な生活環境の予防を務めることや、市が実施する施策に協力することなどが責務とされています。

不良な生活環境の改善に向けた流れとは

実際に市民から苦情や相談があった場合、ごみ屋敷や住人に対してどのような動きになるのでしょうか。
全体の流れを詳しくご紹介します。

1.苦情・相談受付

まずは市の担当部署にて相談を受け付けます。
相談先は以下のとおりです。

物やごみの堆積について 廃棄物対策課
電話:054-221-1364
FAX:054-221-1564
動物の多頭飼育や不適切な給餌について 動物指導センター
●葵・駿河区の場合
  電話:054-278-6409
  FAX:054-278-2987
●清水区の場合
 電話:054-354-2403 
   FAX:054-354-2226
空き家について 住宅政策課
電話:054-221-1192
FAX:054-221-1135
管理不全建物について 建築指導課
電話:054-221-1267
FAX:054-221-1135

※相談先に迷った場合は各区の区民生活課へご相談ください。

2.調査

該当する場所の建物について、住人や所有者に対して状況の確認をおこないます。
報告を求め、立ち入り調査をおこなうほか、市が保有する情報を利用し、福祉サービスの利用状況などについても調べることができます。
もし住人が虚偽の報告や調査を拒否した場合には、5万円以下の過料が科せられることがあります。

3.支援

原因者(住人)の状況や事情に合わせ、福祉的な視点から支援をおこないます。

【支援の例】

  • 堆積したごみの排出の指導や収集
  • 動物の適切な飼い方についての指導
  • 管理不全の建物に対する助言
  • 市営住宅への入居の誘導
  • 動物の引き取り
  • 立ち木などの伐採の助言
  • 保健師、ケースワーカーなどの訪問

ほかにも地域住民による見守り関係機関からの情報提供など、市以外の支援も必要だとしています。

静岡市がおこなうごみの排出についての支援には、以下のような取り組みがあります。

【ふれあい収集】

ふれあい収集とは?

高齢者や障がい者のみの世帯を対象に、不燃・粗大ごみの運び出しをお手伝いするサービス。

対象者

家族や知人の協力が得られない方で以下の条件に該当する方。

    ①高齢者(65歳以上)のみの世帯に属する方
    ②障害のある人のみの世帯に属する方

※対象区域は葵区(安倍6地区を除く)・駿河区・清水区。

対象のごみ

「不燃ごみ」「粗大ごみ」のみ。
1回に出せる量は7点まで。

条件など

屋内に立ち入るため、家族以外の第三者の立会いが必要。
電話にて事前申し込み(不燃・粗大ごみ受付センターへ)が必要。

4.措置

静岡市の条例では、ごみ屋敷の住人に対して支援をおこなうことが基本としていますが、支援をしても問題が解消されない場合には次のような措置を取るよう定めています。

指導 支援をおこなっても不良な生活環境が改善されない場合、市は不良な生活環境の原因となっている人(住人)に対して不良な生活環境を改善するために必要な措置を取るように指導する。
勧告 指導しても状況が改善されなかった場合、市は住民に対して物品の堆積や放置を解消するよう期限を定めて勧告することができる。
命令 勧告を受けた住人が勧告に関わる措置を取らなかった場合、期限を定めて勧告に関わる措置をおこなうことを命ずることができる。
行政代執行 命令を受けた人が正当な理由もなく命令に従わなかった場合、他の手段で命令を履行できない、かつ命令を不履行し放置することが著しく公益に反すると認められたときは、当該措置を当該命令を受けたものに代わっておこなうことができる。

静岡市では他の自治体のごみ屋敷条例と同様、あらゆる措置をしても状況の改善がみられない場合、最終的には行政代執行によるごみや物品の撤去が可能だとしています。
この措置によって不良な生活環境が解消されたあとも、見守りや再発防止をおこなうとしており、住民に寄り添った条例だと言えるでしょう。

・「行政代執行」とは?

ごみ屋敷の「行政代執行」とは何か?実例や採用している自治体をご紹介

ごみ屋敷条例によって期待できること

ごみ屋敷に関する条例があることによって、どのようなメリットが考えられるのでしょうか。

再発が防げる

条例制定前に静岡市がおこなったパブリックコメントでは、強制的な措置ではなく根本的な原因解決へ重点を置いて欲しいという意見が多数ありました。
このことを受けて市では「支援」に力を入れた内容を条例案に盛り込んでいます。
実際に条例では住人の状態に合わせて「見守り」や「福祉的な視点による支援の提案」をすることとしており、一時的な解決ではなく再発防止も踏まえた条例と言えるでしょう。

実はごみ屋敷は自分で片付けた(業者への依頼を含む)としても約半数はリバウンドし、再度ごみ屋敷になってしまうことがわかっています。
もし片付けが強制的におこなわれたとしたら再発する確率はさらに上がるかもしれません。
なぜごみ屋敷になってしまうのか、その原因を取り除かなければ本当の解決には至らず、住人の意思だけではどうにもならないことも多いのです。
市や第三者の介入による適切な支援が行き届くことで、再発防止も期待できるでしょう。

抑止力になる

ごみ屋敷条例では罰則や罰金などを設けているほか、命令や行政代執行など強制力のある措置も定められており、もしおこなわれればごみ屋敷の住人にとっては大きな損失となるでしょう。
例えば行政代執行によってごみや物の撤去がおこなわれた場合、家の規模や状況、物品の量にもよりますが100万円程度の費用がかかることも珍しくありません。

実際に2021年に愛知県蒲郡市でおこなわれた行政代執行では、400万円ほどの費用がかかっています。
そして、この行政代執行に関する費用はごみ屋敷の住民に対して請求され、支払わなければ財産を差し押さえられる可能性もあり、回収から逃れることはできません。

金銭的なリスクのみではなく、条例の命令に従わなければ氏名の公表をされることもあり、場合によってはメディアに取り上げられることもあるでしょう。
騒がれれば暮らしにくくなるため、そうなる前に何とかしなければと考えるきっかけになることも期待できます。

ごみ屋敷問題の解決が期待できる

やはり条例があることの大きな違いは、行政が具体的に動きやすいということです。
条例では具体的にどのような段階を踏んで対応を進めていくかが定められており、次のステップがわかるということは行政にとってもメリットだと言えるでしょう。

実はごみ屋敷に関する条例のない地域でも、地域住民の健康や生活を守るために何かしらの対策を取っています。
具体的にはごみ屋敷への訪問、見回り、パトロールや、警察や消防と連携して働きかけるなど、住人に対して強制力はないものの助言やサポートなどをおこなっていることもあります。

しかし、自治体によってはごみ屋敷への対策に慣れておらず、実例がないと体制が整っていないことも。
また、ごみ屋敷に関する相談窓口を設けていないことで、どの部署が対応するか定まらず、相談しただけで具体的に動いてもらえないということもあるでしょう。

条例は市民にとって必ず対応してもらえる保証にもなり、いつかは解決に繋がるという安心感があると言えます。

実例を見てわかる条例の課題とは?

ここまでごみ屋敷に関する条例でできることや、期待できる効果などについてお伝えしてきましたが、実際に解決するまでには課題もあると言います。
過去の実績や実例を見てわかった条例の課題とは何なのでしょうか。

実際の対応で最も多いのは「指導」

平成29年度に環境省がおこなったごみ屋敷に関する調査では、条例を制定している82市町村に対し、どのような具体的措置をおこなっているかアンケートを取りました。
その結果、最も実施されているのは「助言・指導」(24.2%)で、次に「調査」(21.0%)、「支援」(14.5%)と続きます。

ごみや物を強制的に撤去する「代執行」をおこなったケースは6.5%に留まり、ほとんど実行されていないことがわかりました。

その理由として以下のことがあげられます。

  • 代執行に至るまでの間におこなう支援や指導によって改善がみられる(または解決する)
  • ごみ屋敷の住人に精神疾患や障害があり、責任能力がないために命令や強制のような手段を取りにくいため
  • ごみ屋敷の住人には経済面や生活上の問題点は多くあり、ごみ屋敷を解決するにはこの問題を解決するのが先決であるため

このように、求められるのは代執行よりも「支援」であり、静岡市のように支援に重点を置いた自治体が増えていくと思われます。

解決に至るまでに時間がかかる

ごみ屋敷条例のある自治体では市民からの相談や苦情を受け付けた後、条例に沿って対策・解決をしています。
解決できるケースは増えるものの、そこに至るまでには時間がかかることが多いといいます。

例えば京都市にあるごみ屋敷では、最終的に行政代執行が実行されたケースがあります。
しかし行政代執行に至るまでには、行政が動き出してから6年という月日が経過していました。

【行政代執行までの経過】

・2009年:市民からの相談
・2010年~2015年までの6年間:繰り返し改善指導
・2014年~2015年までの1年間:約126回の訪問、61回の面談で改善要求
・2015年10月:ごみの撤去の勧告を行うが拒否
・2015年11月:ごみ撤去の命令を行なうが実施されなかっため行政代執行

経過を見てもわかるように、京都市はごみ屋敷の住人に対し100回以上も訪問をおこなっており、支援や指導を中心に対応してきました。
人への支援に重点を置く条例であるからこそ、行政代執行という強制手段を避け、時間をかけてきたと言えるでしょう。

京都市のこのケースでは行政代執行に踏み切りましたが、実際にはそこに至るまでの解決を目指すケースも多く、時間がかかることが想定できます。

スムーズな解決にはノウハウが足りない

全国でごみ屋敷に関する条例がある自治体は、令和4年時点で101自治体(環境省調べ)となっており、まだまだ少ないと言えます。
条例を制定したからといって前例が多いわけではないため、職員の対応にはバラつきがあるといいます。

実は自治体のなかには条例はあるものの、ノウハウがないために対応が消極的になっているところもあるのだそう。
住人が「ごみではない」と主張した場合の対応をどうするかや、複雑な手続きを踏まなければならないことなど、課題があるとの意見も出ています。

手続きに関して多くの条例では、相談受付から代執行までの間に調査、指導、勧告、命令などの手順があり、流れの中で有識者による審議が必要となる場合も。
静岡市でも行政代執行をおこなおうとするときには、委員7人以内をもって組織する審議会にて諮問※しなければならず、実例が少なければ審議にも時間がかかるかもしれません。
※諮問(しもん)とは…法令上で定められた事項についての意見を尋ねて求めること

静岡市ごみ屋敷条例のポイントは?

ここまで静岡市のごみ屋敷条例について詳しい内容とともに、ごみ屋敷の原因や条例の問題点などもご紹介してきました。
静岡市の条例制定までの特徴として、市民に対してパブリックコメントを求めるなど地域住民の意見を取り入れた条例になっています。
そのため、支援を重点に置くだけではなく、罰則や命令、代執行といった厳しい措置が定められており、条例制定がごみ屋敷解決に向けての大きな一歩となっているでしょう。

静岡市のごみ屋敷条例のポイントは以下のとおりです。

  • 「不良な状態」の定義にはごみや物の堆積、立ち木や雑草の繁茂、動物の多頭飼育などがある
  • ごみ屋敷の住人が抱える問題への支援、解消を根本とする
  • 条例に違反すると5万円以下の過料が科せられる
  • 支援をしても解消されず、周囲に悪影響がある場合は強制力のある措置(代執行など)がおこなわれる

条例にはさまざまな課題があるとはいえ、自治体が介入することによってごみ屋敷の解決率が上がっていることがわかっています。
例え代執行までに時間がかかったとしても、支援や措置をおこなうことで問題解決の後押しになるほか、地域住民にとって安心材料の一つになるでしょう。
静岡市は支援や再発防止に重点を置いていることから、ごみ屋敷の根本的な解決が期待できる点もポイントです。

ごみ屋敷の片付けはラクタスへおまかせ!

ごみ屋敷条例の有無に関わらず、自宅や身近な人の家がごみ屋敷になってしまうことはさまざまなリスクが潜んでいます。
住人の健康面や災害・防犯面での心配以外に、近隣トラブルなど、住居が賃貸であれば大家や他の住人と揉めることもあるかもしれません。
ごみ屋敷であるということは住人だけの問題ではなく、周りの人も巻き込む可能性のある社会問題だと言えるでしょう。

しかし、ごみ屋敷になってしまった家を急に自分で片付けることは困難です。
大量に溜め込んだごみや物を処分するだけではなく、蓄積された汚れや臭いを取り除くには時間、体力、根気が必要になるでしょう。
もし、自力で片付けを考えているのであれば、ごみ屋敷専門の清掃業者へ依頼することを検討してみてください。
専門業者ではスピーディな片付けだけではなく、周辺住民への配慮や消臭、除菌、害虫駆除など、ごみ屋敷ならではのケアやサービスが期待できます。

当社ラクタスは愛知・名古屋を中心にエリア拡大中で、いずれは静岡県も対応予定です。
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2023-12-14

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