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投稿日:2023年4月5日
更新日:2024年5月14日

ごみ屋敷の住人には「精神疾患」「発達障害」を抱えている人が多いのをご存じでしょうか?

「精神疾患」とは脳に何らかの機能的障害が起こり、精神や身体にさまざまな症状の変化が見られる障害のことで、ごみ屋敷に関係する代表的なものは「うつ病」や「統合失調症」「強迫性障害」などです。

一方、「発達障害」は先天的な脳機能の障害で、遺伝による関係も強いとされています。
例えば「注意欠如・多動症(ADHD)」や「アスペルガー症候群」は、ごみ屋敷に繋がる可能性のある「特性」を持っています。

「ごみを捨てることができない」「ごみかどうかの判別ができない」という特性を持っているという人は、発達障害の症状が関わっているかもしれません。

今回は「アスペルガー症候群」に焦点を当てて、その特徴や診断のポイント、ごみ屋敷を作り出してしまう原因などを解説していきます。
身近な人や自分に思い当たるという方は、参考にしてみてください。

アスペルガー症候群はASDのひとつ

アスペルガー症候群は、発達時にいくつかの面で重症で広範な障害が起きる病気であり、少し前までは「広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい)」と呼ばれていました。
広汎性発達障害は「アスペルガー障害」「自閉症」「特定できない広汎性障害」などに分類されていましたが、アスペルガー症候群は自閉症に見られる特徴と類似する点が多いことから、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」としてまとめて考えられるようになっています。

つまり、アスペルガー症候群は「自閉スペクトラム症(ASD)」のグループの中に含まれている、という考え方です。

自閉スペクトラム症とは

自閉スペクトラム症(ASD)は、発達障害のひとつです。
お伝えしているようにアスペルガー症候群もASDに含まれており、自閉症と区別することなく同じ考えのものとなっています。

また、自閉スペクトラム症の発症率は約100人に1人と言われており、発達障害の中で特に頻度が高いことも特徴です。

自閉症とアスペルガー症候群の違いは?

同じASDに分類される「自閉症」と「アスペルガー症候群」は、似ている点が多いことから判断が見逃されがちです。
しかし、言語の遅れがある場合には「自閉症」言語の遅れ(発語の遅れ)があまりみられない場合には「アスペルガー症候群」と見分けることができます。

また、アスペルガー症候群の場合には知能指数も正常であり、ときには正常の範囲を大きく上回ることもあります。

とは言え、この二つはそれぞれの障害特性の区別が難しく、見分けるのが困難であることからどちらも「ASD」と呼ばれるようになったのです。

アスペルガー症候群の基本情報

「自閉症のうち言葉の発達の遅れのないもの」と言われるアスペルガー症候群。
ここからはさらに詳しく特徴や症状についてお伝えしていきます。

【アスペルガー症候群とは?】

  • 自閉スペクトラム症(ASD)のカテゴリーのひとつ
  • 平均的な知能を持つ
  • 発病頻度は1000人中数名程度
  • 男女比は男子に多い

アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム症の原因は特定されていません。
しかし、先天的な脳の異常によるものや、胎内環境や周産期のトラブルが関係していると考えられています。

先天性のものと聞くと遺伝が関係しているのではないかと考える方も多いようですが、遺伝は一つの要素にしか過ぎず、親がアスペルガー症候群だからと言って子どもが必ずしも遺伝するというわけではありません
逆に誰の子どもであってもアスペルガー症候群になる可能性はあるということです。

また、愛情不足やしつけなど、親の育て方は関係ないとされています。

アスペルガー症候群の特徴とは

アスペルガー症候群の人は、「コミュニケーションや対人関係が苦手」と言われています。

子どもの頃に「クラスに馴染みにくい」「友達ができにくい」などの経験をすることや、大人になってからは「少し変わっている人」と思われる傾向にあり、なんとなく生きづらいと感じる人もいるようです。

これらは以下のような、アスペルガー症候群を含む自閉症の特徴が関係しています。

  • 周囲との交流が困難
  • 興味のあるものが特定の物だけに限定されやすい
  • 難しい言葉を使ったり、話し相手を無視した一方的な話し方をする
  • 自分の気持ちをうまく表現できない
  • 待つことができず、突然動きまわることがある
  • 聴覚、視覚、触覚など、極端に過敏・鈍感が見られる

このほかにも、「運動機能の軽度な障害がある」というデータもあります。
アスペルガー症候群の人は、視覚や聴覚、触覚などによって外部から入ってくる情報を脳の中で上手に整理することが苦手なため、運動が苦手な人が多いようです。

また、こだわりが強い、周囲とコミュニケーションを取りにくい、ということからうつ病などの「二次障害」になりやすいとも言われています。
うつ病を患い、病院でよく調べたらアスペルガー症候群だったという人も少なくありません。

アスペルガー症候群は「大人」と「子ども」で大きな違いがない

アスペルガー症候群は大人と子どもでの症状の違いがあまりありません。
子どもの頃からの症状が継続して大人まで続いているということになります。

子ども・大人に限らずコミュニケーションを取るのが苦手ですが、子どものときは一人で過ごすのが好きな子、少し変わった子どもという印象で、親から気付かれなかったという人もいるでしょう。
また、保育園や幼稚園に行くようになって、他の子どもと接するようになってから「特性」に気付いてはいても、正式な診断を受けていないということもあります。

このようにグレーゾーン(発達障害の診断は受けていないものの、発達障害の傾向にある状態)の人は、大人になり社会に出てから生きにくいと感じる、人間関係で損をするということが増えることも。
「アスペルガー症候群」という診断を受け、ようやく腑に落ちるという人も多いようです。

症状でわかるアスペルガー症候群の見分け方

アスペルガー症候群のような「発達障害」は子どもの頃から特徴が出てきます。
子どもの頃に以下のような症状がある場合は、アスペルガー症候群の疑いがあります。

  • 視線が合わない
  • 一人で遊ぶことが多い
  • 好きなことは延々繰り返して遊ぶ
  • 人の真似をしない
  • 常に同じような動きの癖がある
  • 冗談が通じない
  • たとえ話を理解できない
  • ごっこ遊びをしない
  • 物の一部、ある行動、順序、遊びなどに異常にこだわる
  • 人に抱きつかれたり触られたりするのを極端に嫌がる
  • 音や光に敏感

これらは特徴の一部です。
多く当てはまるほどアスペルガー症候群の可能性が高くなりますが、子どもがある程度成長しないとわかりにくいものもあります。
そのため、子どもが幼稚園や保育園に入ってから気付くという場合も多くあります。

大人になって子ども時代を振り返ったとき、このような子どもだったなと思った方は、もしかしたらアスペルガー症候群かもしれません。

アスペルガー症候群の検査・診断方法

アスペルガー症候群の診断は医師の問診がメインです。
診断が受けられる医療機関として、子どもの場合、小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来など、大人では精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科があげられます。

大人も子どもも医師の問診で普段の生活の様子や家族から見た印象、過去の病歴など、これまでの経緯を聞かれます。
その後心理検査・生理学的検査などをおこない、ひとまずの判断が下されるという流れです。

とは言え、アスペルガー症候群の診断は1回の診察で判断されるというわけではなく、何回か通院し、時間をかけて慎重に判断されるでしょう。

アスペルガー症候群の治療法はある?

アスペルガー症候群を含む発達障害は、脳の機能によるものなので治すことはできません。
しかし、自分の障害を理解し、向き合うことは大切です。

環境を改善したり、自分にスキルを身に着けることで生活しやすくすることができます。
ほかにも、抗不安剤や、抗うつ剤、精神安定剤を使用した薬物療法や、漢方薬による体質改善などもあります。

アスペルガー症候群は生きづらさから二次障害を持つこともあるため、薬物療法によって精神的な安定を持つことや、不安や興奮を鎮めることは有効だと言えます。

アスペルガー症候群とよく似た発達障害「ADHD」との違いは?

アスペルガー症候群と同じ「人付き合いが苦手」という特徴を持つ発達障害で、ADHD(注意欠如多動性障害)というものがあります。
ADHDは落ち着きがない、物事に集中できない、飽きっぽい、忘れっぽいなどの特徴があり、このことから、ごみ屋敷の原因となりうる発達障害の一つだとされています。

アスペルガー症候群とADHDの両方を併せ持つ人もいますが、ここではこの二つの発達障害の違いについて比較してみます。
思い当たる人は、以下のどちらに当てはまるか見てみましょう。

アスペルガー症候群 ADHD(注意欠如多動性障害)
相手の気持ちがわかる/わからない 相手が嫌がるという概念がない 相手が嫌がるのは理解しているが衝動を抑えられない
コミュニケーション 相手に興味がない・相手の話を聞かない 気が散って相手の話が聞けない
計画性 計画を変えられない 計画を守れない
感情 いつもと違うことが起こるとパニックになる、怒る 自分の思い通りにならないと怒る
集中力 一度興味を持ったことは集中が続く 集中力が持続しない

このように比較すると違いがわかりやすいですが、アスペルガー症候群とADHDは併発している場合や、似たような症状と捉えられることもあり、診断は慎重に行わなければなりません。

例えばADHDの人の特徴として「不注意」というのがありますが、アスペルガー症候群では「特定のものしか興味を抱かない」ということもあり、こちらも「不注意」と捉えられることがあります。
このように、実は異なった意味での不注意でも、周りからすれば同じに見えてしまうこともあるため、安易に判断するのではなく専門医への受診がおすすめです。

・ADHDとごみ屋敷の関係について、詳しい記事はこちら

「ADHDによるごみ屋敷」は何が原因?片付けられない理由とは

アスペルガー症候群とごみ屋敷の関係

アスペルガー症候群にはさまざまな特徴がありますが、ごみ屋敷を作り出してしまうにはどんな特徴が関係しているのでしょうか。

アスペルガー症候群の人が普段の生活の中で「よくあること」を知ると、ごみ屋敷に繋がる行動があることがわかります。

決まったルーティンがある

アスペルガー症候群の人は、物事への強いこだわりがあり、日常生活をルーティン化する傾向にあります。
具体的には「朝起きてからの行動を決めている」といったことで、朝食を取ったあと支度をすると決めている場合、その順序が逆になることを極端に嫌がります。

また、予期せぬことが起きるとパニックに陥ることもあるため、急な対応ができません。
ごみ捨てや掃除に関してルーティン化されていれば家の中をキレイに保つことができますが、少しでも「いつもと違う」ことが起きると不安になり、出来なくなってしまうことも。

こだわりが強すぎると掃除やごみ捨てなどの日常生活に支障が出やすくなるため、精神面でのバランスを考えながら、少しずつこだわりを緩めていくことが大切です。

物が捨てられない

こだわりの強さは所有している「物」にも表れます。
アスペルガー症候群の人は物を捨てるのが苦手だと言われています。

周りから見れば不要なものでも、アスペルガー症候群の人から見ればすべて「必要なもの」であるため、物がどんどん増えていってしまいます。
物が増え部屋が散らかっていても、自分にとってすべて必要なものであるため「部屋を片付けよう」という気持ちが起こりません。

また、特定のものに強い興味を持つのもアスペルガー症候群の特徴の一つで、自分の好きなものは異常に集めることもあります。
そのため、収集癖がある人も多く、これもまた部屋に物が増える原因になっています。

複数のことが同時にできない、優先順位が決められない

アスペルガー症候群だと優先順位をつけるのが苦手という特徴もあります。
片付けようと思っても、「何からすればよいかわからない」といった状態になりがちです。

また、要領が悪い、複数のことが同時にできないというのも特徴で、例えば「黒板を見ながらノートを書けない」「人と会話をしながらメモができない」といった具合です。

そのため、「片付けしながらごみを仕分けする」など作業の同時進行ができず、一つの作業にとても時間がかってしまうこともあります。
まずは決まった箇所の片付けだけ、ごみの分別だけ、と少しずつこなしていくことから始めるのがよいでしょう。

「基準」がないものに対応できない

アスペルガー症候群の人は「多分」とか「大体」のような曖昧な表現のものが理解できません。
そのため、これといった基準のないものは対応できないことが多くなります。

例えば「洗濯は毎日にしなければならないのか」や「掃除はどれくらいの頻度で行うのか」など、決められた基準がないものはやり方がわかりません。
ごみ捨てに関しても、どれをどのように分別すればよいのか捨てるたびに迷ってしまうということがあります。

また、ごみ捨てのルールなどは「常識の範囲内で」というような曖昧な表現のときもあり、家族や周囲の人たちが具体的に教えてあげることも必要になってきます。

【注意】ASDの人は約7割以上が併存症を持っている

アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症(ASD)の人は、さまざまな併存症(同時に複数の疾患を抱えている状態)があることが知られており、約70%以上の人が1つの精神疾患を、40%以上の人が2つ以上の精神疾患をもっていることがわかっています。

特に多いとされているのが以下のものです。

  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • 発達性協調運動症(DCD)
  • 不安症
  • 抑うつ障害
  • 学習障害(限局性学習症、LD)

これらはどれも日常生活において「困りごと」が起きやすいため、掃除や片付けが苦手になることも十分考えられます
特にADHDはその特性から「ごみ屋敷になりやすい」と言われており、ASDと併せ持つことでさらに部屋が散らかってしまうこともあるでしょう。

精神疾患との併存症も多い

ASDであることで社会に馴染めず、精神的に不安定になることもよくあります。
その結果、精神疾患を併発するということもあるようです。
自閉症スペクトラムとの併存疾患として以下のような疾患もみられ、これらもごみ屋敷の原因となり得ます。

  • 不安障害
  • うつ病
  • 強迫性障害
  • 双極性障害
  • 統合失調症スペクトラム

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ごみ屋敷は病気のせい?ADHD・ためこみ症など全部で9つの原因と解決法を解説

アスペルガー症候群の人がごみ屋敷を作り出さないためには

お伝えしたように、アスペルガー症候群の人の部屋が散らかってしまうには理由があります。
しかし、アスペルガー症候群の人が部屋の片付けやごみ出しが出来ないのかと言えば、そうではありません。

アスペルガー症候群の特性を生かしながら、部屋を片付けるやり方をご紹介します。

片付け・掃除をルーティン化する

アスペルガー症候群の人は毎日決まった行動をする傾向があるため、掃除や片付けもルーティン化することで行えるようになります。
物の定位置を決め、整理整頓の時間を決められた日時で設けるようにします。

物の場所は明確に決めておくほうが片付けがしやすいため、ラベルなどを貼り、どこに何を入れるかなどわかりやすくしておくとよいでしょう。

必要か不要かの基準を決める

部屋をキレイに保つにはできるだけ物が少ないほうが有利です。
しかし、アスペルガー症候群の人は物を捨てるのが難しいという特徴があります。

物事を複雑に考えるのが苦手なため、使用していなくても思い入れがあったり、大切だと思えばすべて「必要なもの」となってしまい、物が溢れてしまいがちです。
「1年以上使用していないものは捨てる」「壊れているものは捨てる」「似たようなものがある場合は捨てる」などの捨てる基準を設けることによって、不要な物の判断がしやすくなります。

家族や友人の見守りが大切

アスペルガー症候群の人は変化に弱く、臨機応変に対応するということが難しいと言われています。
掃除や片付けの途中に思いがけないことが起きたり、いつもと違うことが起こったらパニックになることも少なくありません。
また、自分ではどうしても不要な物の判断ができないことや、ごみの分別方法がわからないこともあります。

このような事態もあるため、部屋の掃除のときには家族や友人の協力が不可欠となってきます。
一緒にルールを作ることや、作業をするなどをして見守ることでごみ屋敷化するのを防ぐことができます。

業者の手を借りるのも一つの方法

一人ではどうにもできないと思ったら、業者に依頼して片付けをするのも一つの方法です。
ごみ屋敷専門の業者であれば、細かい要望に応えてくれるため、捨てる・捨てないの仕分けを行ってくれることもあります。

また、ごみ捨ての分別が苦手という場合は、まとめて処分できる不用品回収業者などを利用すると、細かい分別や品物ごとのルールがわからなくても処分ができるので便利です。
ただし業者の利用は費用がかかるため、何社か見積もりを取り、事前に費用や作業内容を把握して依頼するのが安心です。

ごみ屋敷の片付けは周囲のサポートが大切

今回はアスペルガー症候群の特徴とごみ屋敷になってしまう原因などをご紹介しましたが、ごみ屋敷の住人には発達障害や精神疾患など、心に関わる「障害」を抱えているケースが多く存在します。
どちらも目に見えない障害で、なかなか理解されにくいということもあり、ごみ屋敷の原因が「心の障害」であることに気付かないこともあります。

アスペルガー症候群は発達障害であるため根本的な治療方法はありませんが、障害による困難を軽減し、特性を活かすことはできます。
そのためには医療機関を受診し、適切な治療を行うことが大切です。

アスペルガー症候群でなくても、ごみ屋敷となってしまった家の掃除には家族や周囲の人間のサポートが重要です。
時には業者の手を借りながら、少しずつ部屋の片付けができるようにしていきましょう。

2024-05-14

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