更新日:2023年7月5日
「買い物依存症」という言葉をご存知ですか?
「買い物依存症」は買い物を繰り返し行ってしまうことで、単なる買い物好きとは異なり「買い物に執着する」というのが特徴。
「依存症」と名が付く通り、生活や社会活動に影響の出る精神病の一つであるとされています。
買い物依存症は「借金を抱えてしまう」「買い物以外の活動ができなくなる」など、生活に支障が出ると言われていますが、一方で問題となっているのが「家がごみ屋敷になってしまう」ということ。
買ったものが増えていき、片付けられない、捨てられないモノたちが溢れて「汚部屋」や「ごみ屋敷」となっているケースが増えています。
ごみ屋敷は放置しているとさまざまなところで悪影響を及ぼすため、早めに対策を取らなければなりません。
しかしごみ屋敷の原因が買い物依存症だった場合、まずは依存症の治療が先決になります。
そのためには、ごみ屋敷の住人が「買い物依存症」かどうかの見極めも大切です。
そこで今回は「買い物依存症」の症状や判断ポイント、ごみ屋敷との関係について解説していきます。
買い物依存症の対処法もご紹介しますので、身近に思い当たることがある方は参考にしてみてください。
目次
買い物依存症とは
買い物依存症は「買い物が過剰である状態」のことで、一種の中毒状態にあると言えます。
医学的には強制性購買や偏執狂(単一狂)と呼ばれ、ICD-10(WHO(世界保健機関)が作成する疾患の分類)では成人のパーソナリティー及び行動の障害に分類される「習慣及び衝動の障害」とされている疾患です。
まずは買い物依存症について詳しく解説していきます。
買い物依存症の症状とは
買い物依存症の症状は以下の通りです。
当てはまるものが多いほど依存症である可能性が高くなります。
- いらない物を買ってしまう
- 買ったものを覚えていない・使っていない
- 買い物の後に高揚感がある
- 買い物の後は後悔してしまう
- 買いたいと思ったら欲求を抑えられない
- 買い物をしないとイライラする
- 借金をしてでも買い物する
- 買い物をする自分に罪悪感・不安感がある
- 自分がいくら使ったか把握していない
- 店員さんにチヤホヤされると嬉しくなって商品を買ってしまう
買い物依存症になりやすい人とは
買い物依存症になりやすいのは、一般的には女性が多いと言われています。
確かに女性には買い物好きが多く、依存症でなくてもストレス発散や趣味として買い物を楽しむ人も多いのではないでしょうか。
しかし実際は男性であっても買い物依存症のリスクは同じです。
買い物依存症になりやすい人の特徴をあげてみます。
- ストレスを多く抱えている人
- 自分に自信がない人
- 見栄を張りたい人
- 真面目に生きている人
- 孤独を抱えている人
買い物依存症の人たちは「買い物で自分の心の隙間を埋めたい」と考えている人たちが多くいます。
「買い物でストレスを解消したい」「コンプレックスを克服するために買い物をする」「自信を得るために買い物をする」「寂しい気持ちをごまかすために買い物をする」などです。
そこには家族との関係や生い立ちなどが関係していることもありますし、環境によるものやほかの精神疾患によるものなどさまざま。
問題の大きさによっては専門医による治療が必要になることがあります。
買い物依存症になってしまう原因とは
買い物依存症の主な原因として考えられるのは3つあります。
その一つが「ストレス」。
現代社会では誰しもが大なり小なりのストレスを抱えて生きていますが、これを発散させるために買い物をし、やがて依存症になってしまうということです。
そして二つ目の原因は「遺伝」、三つ目の原因は「環境」です。
詳しく見ていきます。
原因1.ストレス
買い物依存症になる人の多くは、日頃からストレスのはけ口としてショッピングをしていたという人が多い傾向にあります。
「買い物をしたらすっきりする」「買い物がストレス発散になる」という人の脳では買い物によって「ドーパミン」という神経伝達物質が出ています。
ドーパミンは快楽物質であり、これが脳内に分泌されることで生き物は快楽や喜びを感じることができますが、過度な買い物という行動でもドーパミンは分泌されます。
ストレスによる心の不安や緊張を和らげるために快楽を求めているというわけです。
しかしドーパミンは永遠に分泌され続けることはなく、すぐに枯渇し、再度快楽や喜びを欲するので買い物行動が促進されます。
これが買い物をしてもまたすぐに買い物をしたくなる行動の理由です。
また、何か依存するものがあるとストレスから目を背けることができるというのも理由の一つかもしれません。
原因2.遺伝
依存症は個人の問題であると捉える方が多いかもしれませんが、実は家族の中に依存症患者がいると、その子どもや孫も依存症になるリスクが上がると言われています。
厚生労働省の10,000組を超える双生児の縦断研究では、「依存症の原因の約半分は遺伝が原因である」と報告があるほど。
またアメリカのミズーリ大学の研究によれば、依存症の発病には「環境」や「性格」よりも、「遺伝」が圧倒的に重要であると考えられており、依存症に関わっている「脆弱性遺伝子」を多く持っている人、または多く遺伝子が発現している人ほど依存症になりやすい、依存症を発病するという仮説が有力だと言われています。
遺伝に加えて環境や本人の性格など、さまざまな条件が揃うことで買い物依存症が発症するのかもしれません。
原因3.環境
買い物依存症になってしまうきっかけの一つに、「買い物がしやすい環境にいる」こともあげられます。
その一つがオンラインショッピングの普及です。
ここ数年でオンラインショッピングの利用者が増え、2019年のコロナ禍以降は3人に1人の割合で増加しています。
オンラインショッピングは便利なものですが「買い物が簡単にできてしまう」ことと「クレジットカード決済がしやすい」ということが買い物依存症を助長しています。
いつでも24時間買い物ができるうえに、現金が無くても買い物ができてしまうので買い物をする回数が増えてしまうのです。
また、買い物依存症の人の多くは「一人で買い物をする」「オンラインで購入する」ことを好む傾向にあります。
そういったことからも、オンラインショッピングにハマる買い物依存症患者が増えているのかもしれません。
買い物依存症と併発するメンタルの不調
衝動的な買い物行為は、買い物依存症だけが起こるとは限りません。
他の精神疾患に罹っていることや、買い物依存症と同時に併発していることも考えられます。
もし他の精神疾患に罹っている場合は、その病気の治療も行わなければなりません。
また、他の病気が隠れていないかを知るためにも、精神科などの専門医にかかる必要があります。
考えられる他の精神疾患は以下の通りです。
- うつ病
- 不安症
- 強迫性障害
- 双極性障害
買い物をする理由として
「辛い気持ちを発散させるために買い物をしている」
「落ち込んだ気持ちに耐え切れずに、気晴らしや気分転換のために買い物を繰り返してしまう」
「買い物をしないと何か悪いことが起きるのではないかという不安からの買い物をする」
「気持ちがよくなったり、ついつい気が大きくなってしまうと買い物を衝動的にしてしまう」
これらの理由で買い物を繰り返してしまうという方は、先にあげた4つの精神疾患も関係しているかもしれません。
買い物依存症になると起こり得るリスクとは
買い物依存症になってしまうとさまざまなリスクが考えられます。
ここではリスクについていくつかご紹介します。
- 金銭的に困難になる(借金を抱えるなど)
- 睡眠や食事が疎かになり本人の健康を害する
- 仕事や学校を休みがちになる
- 嘘をついて家族との関係を悪化させる
- 家が買ったもので溢れ、散らかる(ごみ屋敷や汚部屋になる)
リスク1.金銭的に困難になる(借金を抱えるなど)
買い物依存症のリスクの中で、特に生活に影響が大きいのが金銭面です。
買い物をするためには当然お金が必要で、依存症が進むとお金を使うことに対するコントロールができなくなってしまいます。
買い物依存症とよく比較されるのが浪費癖ですが、浪費癖があったとしても生活が回っているなら買い物依存症とまではいきません。
買い物依存症の人は消費者金融などで借金をしてでも買い物をしてしまい、生活が破綻してしまう、自己破産するなどの人も多くいます。
依存症である本人は「これ以上借金をしたら本当にまずい」とわかってはいても、買い物をしたい衝動を抑えきれないのが買い物依存症の怖いところです。
リスク2.睡眠や食事が疎かになり本人の健康を害する
依存症になってしまうと、生活の中で依存の対象(買い物依存症の場合は買い物という行為)が優先になってしまいます。
通常、人間は食べることや寝ること、大切な人と過ごすことなどを優先して生きています。
これらは人間が健康に生きていくために必要なことであるため、無意識に優先しているのです。
しかし、依存症になってしまうと生活の中での優先順位が正しく判断できなくなってしまいます。
買い物依存症においては、買い物が何よりも優先になってしまい、食事や睡眠を削ってでも買い物に出てしまうことや、ネットショッピングのサイトをずっと見ているということも。
人間の健康を維持するための必要なことが疎かになることで、依存症本人の身体や心の健康が損なわれることになるのです。
リスク3.仕事や学校を休みがちになる
食事や睡眠、大切な人と過ごす時間などを削ってまで買い物をする…という状態がさらに進むと、仕事や学校などを休んで買い物に行くようになる人もいます。
日常生活や人生に大きな支障が出るほどのめり込んでしまうのが依存症であり、現実的な判断すらできなくなってしまいます。
リスク4.嘘をついて家族との関係を悪化させる
買い物依存症を放置していると、家の中に買ったものがどんどん増えていきます。
当然同居している家族がいればおかしいと気付き、買い物をやめるよう説得することや、依存症ではないかと疑って専門医への受診をすすめてくるでしょう。
しかし依存症になっている本人は、病気であることを認めたがらない傾向にあります。
そのうち家族には買い物をしたことを隠したり、嘘をついてお金を持ち出したりと、家族との関係も悪化することが少なくありません。
依存症は本人だけでなく、家族も巻き込むことが多いのです。
リスク5.家が買ったもので溢れ、散らかる(ごみ屋敷や汚部屋になる)
買い物依存症になるとほとんどの場合、家の中が散らかっている状態になります。
これは「買ったものがどんどん増えていくから」ということも原因の一つですが、「依存症である」ということが大きな理由です。
依存症や精神疾患を抱えていると部屋の片付けができなくなります。
「片付けをしない」というのではなく「汚い状態をなんとも思わなくなる」ことの方が多いようです。
部屋がどんな状態か、自分がどんな状況にいるのかを考えられなくなるのです。
食事や睡眠も疎かになるような状況では、当然部屋の片付けをできる状態ではありません。
買い物依存症の方の部屋には買ってきた服やかばん、アクセサリーなどが「タグがついたまま」「紙袋に入ったまま」放置されていることも。
それらが放置され積み重なっていくと部屋が物で溢れる、足の踏み場が無くなる、掃除が行き届かないなどと悪化し、部屋が汚部屋になっていくのです。
買い物依存症がごみ屋敷を生む…その後はどうなる?
記事のタイトルにもあるように、買い物依存症はごみ屋敷の原因の一つとされています。
買い物依存症の特徴は、買い物に執着しているため、買った物に対してはあまり興味がないということ。
買ったことで満足し、家に持ち帰ったり商品が届いたりした後も使用することがなく、そのまま放置していることが少なくありません。
そのために物が増え、掃除や片付けもできず、部屋が散らかっていくのです。
お伝えしたように、依存症や精神疾患に罹っていると掃除や片付けができなくなるケースが多くなります。
中でも買い物依存症は物が増えていく環境にあるため、ごみ屋敷となりやすいのです。
ごみ屋敷になると考えられる悪影響とは
ごみ屋敷は家の中がごみや物で溢れ、悪臭や害虫の発生の原因にもなる状況のこと。
当然生活や身体、家族関係や近隣住人との関係にも悪影響が出ます。
考えられる4つの影響をあげてみます。
- 健康を害する
- ケガのリスクが高まる
- 火災のリスクが高まる
- 近隣住民から苦情がくる
影響1.健康を害する
買い物依存症になり、部屋の片付けや掃除をしなくなるとあっという間に部屋に物が溢れます。
溜まったものの中に生ごみがあればあっという間にゴキブリやハエなどの害虫が湧きますし、そうでなくても掃除をしていない部屋は埃や汚れが溜まり、ダニやノミなどの害虫が発生します。
これらは見た目が不快というだけでなく、死骸や害虫に付いている病原菌などがあちこちに付着し、人の体内に入ってきます。
当然、不衛生ですし、病原菌が体内に入ることで感染症などに罹る可能性もあります。
影響2.ケガのリスクが高まる
物が多いごみ屋敷では、足の踏み場がない、物が高く積まれているということも多いもの。
買い物依存症の方の家では、ネットショッピングで購入して届いた段ボール箱が天井近く積み上げられていたというケースもあります。
そのままの状態でもつまづいたり倒れてくる危険がありますが、地震が起きた場合、それらの下敷きになってしまい逃げ遅れることやケガをすることも考えられます。
物が多いということはそれだけケガをするリスクも高いということです。
影響3.火災のリスクが高まる
物が多いことは火災のリスクが高まることにも繋がります。
部屋にある可燃物が多ければ、タバコやストーブなどがきっかけで火が燃え移ることも考えられますし、一度火が付けば周りに燃え移るのも早くなります。
特に買い物依存症の方は紙袋や段ボール箱、梱包材などの可燃性のものが多く、火が付いてしまうとあっという間に大きな火災になることも考えられるでしょう。
影響4.近隣住民から苦情がくる
ごみ屋敷が近隣に知れると苦情や嫌がらせを受ける可能性もあるでしょう。
アパートやマンションなどの集合住宅の場合は管理人に通告され、場合によっては退去を命じられる場合もあります。
家に物が多いだけではバレないだろうと考える方もいるかもしれませんが、害虫や悪臭が発生すると近隣住人に知られる可能性が高くなるでしょう。
買い物依存症かも?と思ったら…解決策とは
「私は買い物依存症かもしれない」
「家族が買い物依存症かも」
そう思ったらまずは専門機関を受診しましょう。
依存症は回復することが可能な病気です。
まずは自覚し、治療していくことが大切です。
やるべきことは次の通りです。
- 専門医の治療・カウンセリングを受ける
- 家族の協力を得る
- 金銭管理能力を高める
対処法1.専門医の治療・カウンセリングを受ける
依存症は回復することができると言われています。
専門医療機関や保健所、精神保健福祉センターといった行政機関に相談し、専門家から適切なアドバイスを得ながら回復に向かうことができます。
買い物依存症は慢性的なもので、この日に急に治るというわけでもありません。
長い目で依存症と向き合い、付き合っていくことが大切です。
対処法2.家族の協力を得る
どの病気でも言えることですが、やはり家族の協力や支えが治療には欠かせません。
買い物依存症においては「夫に打ち明けただけで安心感を得た」「家族に相談したら意識が変わった」という人もいます。
また、家族に買い物依存症の疑いのある人がいる場合、本人が依存症を認めなかった場合でも先ほどの行政機関へ相談してみるのもよいでしょう。
対処法3.金銭管理能力を高める
買い物依存症を認め、対処したいと思ったなら身の回りの環境も変えていきましょう。
必要以上に買い物をしないよう、クレジットカードを解約したりショッピングアプリを削除したりするのも一つの方法です。
また、買い物の際には「購入前に必要かどうか考える」ことや「店員さんの言葉を鵜吞みにしない」など、自分の意識を変えることも大切です。
ほかにも家計簿をつけてお金を何に使ったかを家族に把握してもらう、などの方法もあります。
買い物依存症まとめ
買い物依存症でごみ屋敷や汚部屋となってしまった場合、まずは病気の治療が先決です。
心の健康を取り戻さなければ部屋の片付けも前向きにはなれません。
また、そのような状態では自分ひとりでは部屋を片付けられない、ということもあるでしょう。
そのような場合はごみ屋敷専門の清掃業者を選択することも考えてみてください。
専門業者というだけあって、短期間でスピーディにどんな部屋であってもキレイに片付けることができます。
また、買取を行っている業者であれば不用品を買い取ってもらうことができ、清掃費用を安く抑えることも。
例えば当社「ラクタス」ではグループ会社で不用品回収業者があり、買取専門部署もあることからさまざまな不用品を他社よりも高く買い取ることが可能です。
買い物したけど使っていない物がたくさん放置されている…という場合にも是非ご相談ください。
買い物依存を克服し、キレイな部屋で心身ともに健康的な生活をスタートさせましょう。
2023-06-16
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